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J3も一緒に味わった愛する大分トリニータとの別れ…33歳三平和司、新天地での誓い「また好きになれる」 

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安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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photograph byJ.LEAGUE

posted2021/01/14 11:01

J3も一緒に味わった愛する大分トリニータとの別れ…33歳三平和司、新天地での誓い「また好きになれる」<Number Web> photograph by J.LEAGUE

試合後にはキレキレのダンスを披露するなど、オフザピッチでも人気者に。大分サポーターにとっては忘れられない存在だろう

 仙台戦へ向けた練習。集中力を高めていかないといけない状況において、チーム全体の雰囲気がどこか緩い。そんなチームを見た片野坂知宏監督は「こんなんじゃダメだ!」と怒りを露わにした。この瞬間、三平はハッとした。

「トリニータの良さは、明るいところは明るく、締めるところは締める。そこで(チームの雰囲気が)緩いと感じたら、自分から『もっとやろうぜ』と声をかけていた。でも、そのときは声を出せなかった。いくら契約満了がショックだからといっても、チームのためにやらなくちゃいけないことはある。僕が言うべきだったのに、監督に言わせてしまった。それに悔しさと情けなさを感じたんです」

 サッカー人生において、契約満了を突きつけられたことは初めてのことだったが、それによって今まで積み上げてきた自分を否定するようなことをしてはいけない。その日以降、三平は改めてチームのために戦うことを決意した。

「本当に自分自身と向き合えました。僕にとって一番のモチベーションは人の笑顔なんです。昔から人を笑わせることが大好きだったけど、プロになっていろんな経験をするうちに、人の笑顔を見ることで自分が頑張れるようになっていった。サッカーで言えば、点を取ったとき、勝ったときの周囲の笑顔。チームを引き締めるときも、最後に笑顔を引き出すことで空気にメリハリが生まれる。それに気づくことができたからここまでプロ生活を送れてきたし、それはこれからも変わりません」

引退したら「絶対に後悔する」

 2020年シーズン、三平は大きな手応えを掴んだシーズンでもあった。攻撃陣に多くの選手を抱える大分の中で、リーグ18試合(うちスタメン10試合)に出場。スプリント回数、走行距離ともにフィジカルトレーナーが驚くほど数値を伸ばしていた。

「僕の理想では、あと(現役生活を)3~4年やりたい。トリニータで最後までプレーして、引退後もトリニータのために働くことを勝手に想像していましたが、いざこの状況になると、この状態で引退したら絶対に後悔すると思ったんです。今年はコンディションも今までで一番良かったですし、短命と言われる選手人生の中でまだやれるのにやらないという選択肢は、僕にはなかった」

 1月13日で33歳。チーム探しは想定通り、難航する。30歳以上の選手が複数年契約を結ぶことは難しいと代理人から伝えられ、「俺ってベテランだったんだ」と自覚した。そんな厳しい状況に、当初は待遇の良いタイやインドネシアのリーグへの移籍も模索した。しかし、1つのクラブから熱烈なラブコールをもらい、その考えは一変する。

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