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井岡一翔の“タトゥー論争” 入れ墨を入れた元世界王者・佐藤洋太は「ルールよりも気遣いだと思います」
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2021/01/10 11:03
圧倒的な強さで大晦日の田中恒成戦を制した井岡一翔はその後大きな論争を巻き起こした
プロになる前から入れ墨を入れていた佐藤洋太さんは
そこで今回はこの件を考える上で1つのきっかけを与えてくれそうな元ボクサーに登場してもらうことにした。36歳の佐藤洋太さんはプロ選手になる前から入れ墨を入れていた技巧派にして頭脳派の元世界チャンピオン。WBC世界スーパー・フライ級王座を2度防衛させているから、井岡にしてみるとこの階級の先輩世界王者にあたる。
佐藤さんは29歳で現役を退いたあと故郷の岩手県に戻り、現在は3人の子どもを育てながら「焼肉チャレンジャー」の店長を務めている。早速、佐藤さんに電話してみると「まあ、オレもそうでしたけど、入れ墨が非難されるのは分かってる話ですからね」と切り出し、持論を展開してくれた。
「海外では当たり前じゃないか」という感覚があると思う
「ルールがあいまいな部分もあるんですけど、入れ墨を入れている選手もJBCのルールに気を遣えば変な話にならないと思うんですよね。分からないですけど井岡くんとしては『海外では当たり前じゃないか』という感覚があると思うんです。オレもそう思いますけど、ここ日本ですからね。みんなJBCにいろいろサポートしてもらって(計量、審判、試合進行、病院の手配など)ボクシングができているわけですからJBCも立てなくちゃいけない。自分はそう考えてます。
現役のときレフェリーとかJBCの人とけっこうしゃべってたんですよ。みんなボクシング大好きだしいい人たちです。だから困らせるようなことはしたくなかった。そう考えるとルールというよりも気持ちかなと思います。ルールなんて『ここがおかしい』って突っ込もうと思えばいくらでも突っ込めるじゃないですか。外国人がよくて日本人がダメなのはおかしいとか。どんなルールだって穴はありますから。だからルールよりも気遣いだと思います。
今回も井岡くんがもうちょっと気遣いをすれば良かった。そういうことだと思います。そもそも人生って気遣いの連続じゃないですか。そういうことじゃなくて、どうしても入れ墨を見せて戦いたい(試合をしたい)というのであれば、ルールを改正することに力を注ぐしかないですよね」