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中村憲剛「敵を圧倒して勝ちたい」これからも受け継がれる14番の精神…“憲剛化”したフロンターレ 

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熊崎敬

熊崎敬Takashi Kumazaki

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photograph byMasashi Hara/Getty Images

posted2020/12/26 17:04

中村憲剛「敵を圧倒して勝ちたい」これからも受け継がれる14番の精神…“憲剛化”したフロンターレ<Number Web> photograph by Masashi Hara/Getty Images

サポーターにとって忘れられない2016シーズン。悔しさを噛み締めながら中村憲剛が語ったことが、今のフロンターレにしっかりと根付いている

「やっぱり俺は、“サッカー”で優勝したい」

 シルバーコレクターを返上するためには、なにが必要なのか。

「鹿島は、自分のリズムでプレーできないときの割り切り方がすごい。試合を殺すようなプレーを平気でする。ぼくらも上に行くためには、そういうことをあからさまにでもやるべきだと。そんなことをシーズンが終わってから考えていました。でもね……」

 一拍置いて、中村は付け加えた。

「でもやっぱり俺は、“サッカー”で優勝したいです。こういうことを言うと、“また言ってる”と思われるかもしれない。風間さんが来てからの5年間、俺も懐疑的になったときもあります。勝てない試合が続くと、路線変更したほうがいいのかなって。でも、そうしていたら、チャンピオンシップに進出した今年の勝点もなかったと思うから」

 道はふたつ。鹿島のように結果に執着するか、それとも内容を大切にしながら勝つのか。

 川崎は翌年から、長年の鬱憤を晴らすかのように勝ち始めた。

 17、18年とJ1を連覇し、19年には5度目の決勝で初めてルヴァンカップを制した。そして今季は、手のつけられない勝ちっぷりで3度目のJ1制覇を達成する。

フロンターレの憲剛化

 鹿島との違いに続いて、中村は自らのサッカー観を語ったが、このときの言葉を振り返ると、川崎が長年育んできた哲学を大切にしながら常勝軍団になったことが改めてわかる。

「俺は無数にある解決策の中からベストな選択を続けられるのが、いいチームだと思う。いい攻撃ができないチームは、その解決策がチームにしかなくて、個人が持ってないんです。だから敵がつぶしに来ると、“ぼく、なにもできない”とお手上げになってしまう。サッカーはやっぱり、1人ひとりが解決策を持ってこそ。それをチームにゆだねてしまうと、ある程度のところから先には進まないと思う」

「俺らは敵を圧倒して勝ちたいから、“マークされているから、パスいらない”っていう選手がひとりでもいると成り立たないサッカーをやっている。“敵はいるけどパスくれよ”。そういう11人がそろっているから、敵を圧倒することができる。だから“組織と個”ということでは、断然個だと思う。組織に埋没するような個だと、ウチではできないでしょうね」

 テクニックと判断力に優れる自立した個が、組織を編む。そうして川崎は常勝軍団になった。これはフロンターレの憲剛化と表現しても、大げさではないと思う。

 駆け出しのころの中村は、将来を嘱望されていたわけではない。フィジカルに恵まれていない新人は、むしろプロでやっていけるか不安視された。

 だが彼は、欠点を補うのではなく、長所を最大化することで競争を勝ち抜く。

 長所は、基本中の基本「止める」技術を核としたテクニックと判断力。それは中村だけではなく、やがて川崎の強みとなる。

【次ページ】 テクニックと判断力は消耗しない

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