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ソフトボール・上野由岐子が北京以来の五輪へ メッタ打ちにあっても「ブレずに」進む女王道
posted2020/11/21 17:00
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
Kyodo News
赤一色のユニフォームが、秋晴れの澄み切った青空の下でまぶしく映えていた。ソフトボール女子日本代表候補20人が東京五輪決勝会場となる横浜スタジアムに集結した。
東京五輪用にデザインされたユニフォームをまとい、どの選手も生き生きとした表情を見せている。エースの上野由岐子(ビックカメラ高崎)も真っ赤な色合いが気に入った様子だ。「日本らしいユニフォーム。かっこいいと思ってもらえるようなプレーをしないといけませんね」と、笑顔を浮かべている。
今年2月のグアム遠征以来となる日本代表合宿は、宇津木麗華監督の「仲良く楽しくソフトボールをやろう」という号令で始まっていた。
今合宿は11月8日の日本リーグ閉幕から1週間の休息を挟んだ日程で組まれたものだが、欧州での新型コロナウイルス感染者の爆発的な増加傾向を追うように、日本でも感染者が急激に増えてきたタイミングと重なった。
霧が立ち込めるような状況で発した「楽しくやろう」の言葉。宇津木監督はその意図をこのようにフォローした。
「昨年の今頃は、緊張感を持ちながら努力していこうという言葉を選手に掛けていましたが、今季はコロナ禍で先を読めない中、選手もずいぶん我慢してきたと思います。まずは何より自分たちで楽しんでソフトボールをやる。私自身も選手の笑顔を見たいですから」
「ひとりひとりが後悔しないアピールをするために」
長年の信頼関係があるからだろう、指揮官の思いを余すところなくくみ取っていたのが上野だった。報道陣に公開された11月17日の練習では、上野が身振り手振りを交えながら、同じビックカメラ高崎に所属する濱村ゆかり投手にアドバイスしている様子が目に付いた。その姿はどこか楽しそうでもあった。
濱村は9月12日の日本リーグでホンダを相手に自身初、リーグ史上73度目となるノーヒットノーランを記録した25歳の大型右腕。ただ、日本リーグで完全試合8度、ノーヒットノーランを7度達成している上野の目には、体の使い方にまだまだ改善すべき点があると映っていた。上野はソフトボールより一回り小さい野球ボールを濱村に握らせ、より体重移動にフォーカスできる状態をつくって動きのコツを伝授した。
「今、タイプの異なる6人のピッチャーがここに集まっています。それぞれの良さを宇津木監督にどれだけアピールできるか。ひとりひとりが後悔しないアピールをできるために、少しでもアドバイスをしていければいいと思っています」