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ホンダ、F1撤退ではなく「参戦終了」へ…「大切なDNA」を続けられない“最重要課題”とは?
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2020/10/03 06:01
昨年オーストリアGPでホンダ復帰後初優勝時のフェルスタッペン。今季のホンダはこれまで10戦を消化し、供給2チームが各1勝を挙げている
F1というDNAを失う決断の理由
「自動車業界が100年に1度の大転換期に直面するなか、Hondaは最重要課題である環境への取り組みとして、持続可能な社会を実現するために『2050年カーボンニュートラルの実現』を目指します。そのために、カーボンフリー技術の中心となる燃料電池車(FCV)・バッテリーEV(BEV)など、将来のパワーユニットやエネルギー領域での研究開発に経営資源を重点的に投入していく必要があり、その一環として今年4月に『先進パワーユニット・エネルギー研究所』も設立しました。
F1で培ったエネルギーマネジメント技術や燃料技術、そして研究開発の人材も同様にパワーユニット・エネルギー領域に投入し、将来のカーボンニュートラル実現に集中し取り組んでいくために、今回F1への参戦を終了するという判断をしました」
今回の決定はコロナの影響による経済的な問題ではなく、将来を見据えた技術者などのリソースの配分が要因であることを強調した。
ホンダは再び帰ってくるのだろうか
では、もし『50年カーボンニュートラルの実現』への道筋がついた場合、ホンダは再び世界最高峰の舞台に帰ってくるのだろうか。
「今回は50年にカーボンニュートラルを実現するという新たなチャレンジにリソースを傾けるという判断を下したので、再参戦のことは考えていません。ただ、レースはホンダのDNAですので、現在参戦しているレースについては継続して熱い情熱を持って参戦していきたいと思っています」
表現は異なるが、今回の「参戦を終了する」もまた「撤退」と事実上同じ意味だと受け取っていいだろう。
ホンダにとって、最後のF1となる21年をパートナーとして共に戦うレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は、ホンダの決定に対して、次のようにコメントを寄せた。