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なぜ久保建英はスタメンに選ばれなかったのか……それでも「直接FKを任されたことに意味がある」
posted2020/09/15 20:00
text by
中西哲生+戸塚啓Tetsuo Nakanishi + Kei Totsuka
photograph by
Getty Images
久保建英のラ・リーガ2シーズン目が、現地時間9月13日に幕を開けた。ビジャレアルはウエスカとホームで対戦し、1対1で引き分けた。
ベンチスタートとなった久保は、77分から途中出場した。4-2-3-1のシステムでトップ下に入り、1トップのヘラルド・モレノとタテ関係を築きながら上下左右にポジションを変え、パスの出し手と受け手になった。際どいシュートも放っている。しかし、チームを勝利へ導くことはできなかった。
新天地での第一歩となったウエスカ戦のパフォーマンスを、中西哲生氏に分析してもらう。名古屋グランパスと川崎フロンターレでプレーした中西氏は、引退後に独自の理論を確立して現役選手の技術的サポートに乗り出す。
久保との関わりはバルセロナの下部組織に在籍した当時を起点とし、その成長プロセスを継続的かつ間近で見つめてきた。スペイン移籍後も定期的に連絡を取り合い、技術はもちろん技術を発揮するための思考に至るまで、幅広く助言をしている。今シーズン開幕前のオフにも、一時帰国した久保に技術的なトレーニングを行なった。
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ベンチスタートは想定内でもあった
開幕戦のプレーについて、ポジティブな評価は少数だったと感じます。出場時間が追加タイムを含めて20分弱だったこと、1対1の展開でチームの勝利につながる得点やアシストを決められなかったこと、さらにはボールロストが2度あったことなどが、ポジティブではない評価につながっているようです。
個人的にベンチスタートは想定内でした。
開幕戦から久保をスタメンで起用し、チームが負けるようなことがあれば、批判の矛先が彼に向けられる可能性があります。同じ新加入選手のダニ・パレホとフランシス・コクランは先発しましたが、パレホはバレンシアなどでリーグ戦に400試合以上出場しており、コクランは母国フランス以外にもイングランドとドイツのクラブでプレーしてきた。19歳の久保とは経験値が異なります。久保を少しずつチームに馴染ませていきたい、とウナイ・エメリ監督が考えても不思議ではありません。
この試合に先発したサムエル・チュクエゼ、モイ・ゴメス、それにヘラルド・モレノとパコ・アルカセルのアタッカー陣は、昨シーズンからビジャレアルでプレーしています。今シーズンからエメリ監督の指揮下となり、戦術が多少なりとも変わっているとしても、彼ら4人がこれまで培ってきたコンビネーションは生かされていくでしょう。実際にパコ・アルカセルとヘラルド・モレノは、意思の疎通がとれたワンタッチプレーで相手守備陣を混乱に陥れていました。対戦相手となったウエスカの岡崎慎司が、昨シーズンから積み上げてきたコンビネーションを見せていたように、です。
元スペイン代表のサンティ・カソルラの後継候補として、久保はビジャレアルに迎えらました。しかし、チームにはすでに構築されたコンビネーションが存在しており、現在の久保はポジション争いで追いかける立場です。それもまた、途中出場となった理由に含まれるのでしょう。