ぼくらのプロレス(再)入門BACK NUMBER
鈴木みのる、神宮での拍手と文体への惜別。「ゴミクズみたいな横浜文化体育館! 寂しいじゃねえか」
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph byEtsuo Hara/Getty Images
posted2020/09/05 11:30
8月29日、SUMMER STRUGGLE in JINGUで激闘を繰り広げた鈴木みのる(右)と鷹木信悟。大きな拍手に包まれた鈴木の道は横浜文体と深く結びついていた。
藤波辰爾と猪木の伝説の一戦も。
横浜文体といえば、88年8月8日に藤波辰爾とアントニオ猪木が60分フルタイム闘った伝説的な一戦があまりにも有名だが、鈴木はその時にも関わっている。
「あの8.8横浜文体の第1試合は、俺と松田納(エル・サムライ)の試合だったんだよ。あの時はもうデビューして2カ月経っていたから、地元だとかそんなことはどうでもよくて。第1試合でやって、その後はずっと雑用に追われて。でも、メインイベントでは、セコンドの仕事をしながら感動して涙を流したのを憶えてる(笑)。デビュー2カ月で、まだ猪木ファンの気持ちが残ってるときだからさ。
そして、プロレスに戻るきっかけとなったパンクラスでの(獣神サンダー・)ライガーとの試合も横浜文体だし。俺のプロレス人生の重要な節目節目に横浜文体があったんだよ」
「なくなっちまえ、そんなもん!」
そんな人生の様々な局面を彩ってきた横浜文体の最終興行で野村卓矢を下したあと、鈴木はバックステージでこうまくしたてた。
「この小汚ねえ横浜のゴミクズみたいな横浜文化体育館! なくなるなんて……、寂しいじゃねえか。ハハハハ。クソジジイほどの歴史があるこの体育館のわずか小さな1ページに俺の名前が入っている。だから今日、ここへ来た。
もうこの文体で試合をすることはない。思い残すことも何一つない。古いものが壊され、なくなり、新しいものをその上にまた建てる。当然のことだ。どんどんどんどん新しくなるぞ。いつまで古いものにしがみついてるんだ!? なくなっちまえ、そんなもん!」
今を闘う男、鈴木みのるは晩夏のマット界をジャックした。その目はすでに次を見ている。9月19日に開幕する“最強決定リーグ戦”G1クライマックス。昨年、出場がかなわなかった分も大暴れする腹づもりに違いない。