サムライブルーの原材料BACK NUMBER
清武弘嗣がロンドン五輪スペイン戦、
戦う前に「絶対勝てる」と思った訳。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byFIFA via Getty Images,Asami Enomoto(in the article)
posted2020/06/01 11:35
マタやデヘアなど超一流選手がそろったスペインに1-0で勝ち、ガッツポーズを見せた清武。
デヘアの威圧感は想像以上だった。
誰一人サボらず、集中を全員で保つ。
追加点を奪えなかったのは決定力不足というよりも立ちはだかるデヘアの威圧感が想像以上だったからだ。清武はこう語る。
「デヘアは手も足も長くて、反応が凄くて、マジで(点が)入る気がしなかった。(大津)祐樹が決めてくれて助かりました」
絶対に勝てる、は予感ではない。虚勢でもない。成し遂げるという決意そのものだった。
戦術、雰囲気、決意。すべてがかみ合ってあの勝利があった。
スペイン戦の勝利はあくまで序章に過ぎなかった。
清武と永井の“あうんの呼吸”。
清武は中2日で続く第2戦のモロッコ戦こそ大事だと考えていた。
「せっかくスペインに勝っても次のモロッコに引き分け以下なら(突破が)あやしくなる。それにあれだけ走ったから試合後の疲労感が強くて……。
引き分けでいいっていう考え方は危険だし、引き分けも要らないっていう認識をみんなで持ちました。“体はきついけど、走ろう”ってみんなで意思統一して」
初戦のホンジュラス戦を引き分けたモロッコこそ後がない。スタートからボルテージを上げてくる相手に対し、日本は我慢の展開が続いた。
「それでもやられる気はしなかった。いつかチャンスは来るって思いながら戦っていましたね」
チームを救ったのは清武と永井の“あうんの呼吸”だった。
スコアレスのまま残り時間はあと6分に迫っていた。そのとき――。
鈴木大輔のヘディングでのクリアボールをセンターライン付近で受け取った清武は振り向きざまに浮き球のボールをアバウトに前に送る。裏を狙っていた永井が相手とのスピード勝負に競り勝ち、前に出てきたGKの頭上を越すループ弾が決勝点となった。