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オジュウチョウサンの覚醒にも一役。
進化を続ける馬具の今昔物語。 

text by

石田敏徳

石田敏徳Toshinori Ishida

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photograph byAFLO

posted2020/05/25 08:00

オジュウチョウサンの覚醒にも一役。進化を続ける馬具の今昔物語。<Number Web> photograph by AFLO

今年3月の阪神SJで耳覆いなしのメンコを着用しレースに臨むオジュウチョウサン。障害戦ではJ・GI7勝を含め16勝、障害重賞は13連勝中。

近年は輸入品と既製品が増えたが。

 オジュウチョウサンがそうだったように、その過程でしばしば、重要な役割を果たす馬具は、ときの流れとともに変化と進化を遂げてきた。

 ただ、鞍をはじめ、ほとんどの馬具を自前でつくっていた昔に対し、現在、扱う商品の大半は輸入品と既製品。息子の嘉昭社長(1971年生まれ)にバトンを渡し、現場の一線から退いた嘉一さんは今でも作業場に立つが、いわゆる“職人的な仕事”の中心は持ち込まれる馬具の修繕やサイズ直しに移っている。

 一方、海外では新しい馬具が次々に開発されている。日本馬の海外遠征が当たり前になり、情報量も格段に増えた時代。馬具屋としてもアンテナを広く張り巡らせておく必要があるわけで、嘉昭さんも「欧米、オーストラリア、香港のパートナーから、常に最新のカタログを取り寄せています」という。

人間も足がむくむ、では馬は?

 最近、ヒットチャート急上昇中の馬具「コンプレッションフード」もそんな流れのもとで日本へ入ってきた。

「あれを開発したオーストラリアのメーカーは輸送の際、馬に着せるボディースーツを主につくっているんです。人間でも長時間、飛行機や新幹線に乗ると足がむくみますよね? それを防ぐために馬の身体や脚をちょっと圧迫してあげる、要はウェットスーツのようなものが主力商品。そこからの連想でコンプレッションフードが開発されたみたいです」

 こうして開発されたコンプレッションフードの効用とは? もともとは調教で使われていた馬具が何故、にわかに脚光を浴びたのか。また、くわえていると“健康”になる(?)ハミなど、新たな素材もどんどん登場している馬具の変遷については是非、間近に迫ったダービーをはじめ、様々なアプローチから「競馬の新常識」を特集した発売中のNumber本誌をご一読いただきたい。

【次ページ】 「本人」に感想を聞けない職業。

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オジュウチョウサン
時田嘉一

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