武蔵丸の辛口御免 Oh!相撲BACK NUMBER
最強と呼ばれた“右四つ横綱”から、
新大関・朝乃山への提言。
posted2020/03/23 20:30
text by
武蔵川光偉Musashigawa Mitsuhide
photograph by
Kyodo News
史上初の無観客開催の本場所。
長い15日間が無事に終わったね。
世界的にいろいろなスポーツが延期や中止になっているなか、日本の大相撲をアピールできることにもなり、結果的にはよかったこともある。力士だけで600人以上で、関係者を含めると1000人ちょっとはいるんだ。誰も感染することもなく、これはすごいことなのかもしれないね。
でも、正直言ってものすごいストレスの毎日だった。
番付発表後から約1カ月間、後援者との会食などもみんな断って、ずっと宿舎から出ずにいたんだ。やっと十四日目に出前でお好み焼きとたこ焼きを――大阪のソウルフードを食べたよ(笑)。
僕の職務は監察委員で、いつもは天井近くの小さな部屋で相撲を見ているんだけど、今場所は2階席から見ていたんだ。無音でシーンとしていて、やはり違和感はあったな。お客様の大切さも身に染みたし、すべての雰囲気も生活も違うなか、力士たちはよく頑張ってくれたと思うよ。
朝乃山は「腕がいやらしい人」になれ。
そんななかでも、朝乃山が大関昇進を決めて、明るい話題をもたらしてくれたな。
力は充分にあると思うけれど、あとは“技”だよ。僕も右四つだったし、朝乃山もそう。まだ腕の使い方や手首の使い方がうまくないんだ。
まわしを取ったままではダメなんだよ。そこから手首や腕(かいな)を返したり、まわしを浅く取ってみるとか、“腕の技”を身につけなきゃ。
僕は「腕がいやらしい人」という言い方をしていたんだけれど、器用で自由自在に腕を動かせる人は相撲が巧いの。今で言えば白鵬がそうだね。かつては貴乃花もまわしを取ったあとに差したり切ったりと自由自在だった。千代の富士さんだって、前みつ取ったあとにすぐに次々と技が出ていたでしょ。「腕のいやらしさ」を身につけていったらいいと思うよ。