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新型コロナでセリエA延期&無観客。
政府と迅速に連係、日本への視線は?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2020/02/25 18:00
セリエAの試合延期を伝える『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙。イタリアでは国を挙げて新型コロナウイルスへの警戒心を高めている。
”第1号”がスポーツ愛好家の衝撃。
ミラノから車で1時間、コドーニョという人口1万6000人の小さな町で国内感染者第1号が見つかったとき、スポーツ界が受けた衝撃は大きかった。
その38歳の男性は、体力や免疫力の劣る高齢者どころか屈強なスポーツ愛好家で、地域のアマサッカークラブと陸上クラブに所属する競歩ランナーだったからだ。
彼は今月頭から2週続けて異なる町で参加者1000人超のハーフマラソンを走り、15日にはサッカー5部リーグのアウェーゲームにMFとして出場した。
彼が19日に緊急入院し陽性反応が出た後、コロナウイルスはコドーニョの町とその周辺地域を中心に感染拡大を続けている。“第1号”のスポーツイベント参加が、拡散につながったことは否めない。サッカークラブのチームメイトと対戦相手には、29日まで半強制的な外出自粛要請が出されている。
彼らが住む地域は警察とイタリア陸軍が封鎖しており、包囲網を破れば刑事罰処分として懲役刑だ。厳しく映るだろうが、逆にいえばイタリアはそれほどまでに、ウイルス封じ込めへ断固たる決意で臨んでいるともいえる。
気になる日本への見方の変化。
気になるのは、コロナウイルスへの警戒が厳しくなる中での、日本への見方の変化だ。
2026年冬季五輪開催国であるイタリアが、東京オリンピックを控える日本に寄せる関心は高い。
だから、ダイヤモンド・プリンセス号のコロナウイルス感染が発覚したとき、35人の同胞乗客の扱いは疑問を残した。
何しろ日本側からまったく情報が出てこない。
イタリア国籍のジェンナーロ・アルマ船長は母国メディアを含むあらゆる取材拒否を貫いているが、乗客19人は22日早朝、イタリア空軍の特別機でローマに帰国した。
彼らは検疫を受け、ローマの陸軍スポーツ施設で14日間の隔離生活に入った。受け入れにあたった隊員たちは全員、一切皮膚を露出しない完全防護服姿で、帰国者たちはようやく事態の深刻さに気づいたのではないか。