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「恩返しするには、成績しかない」
紀平梨花、勝負への執着心と判断力。
posted2020/02/12 20:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto
演技が終わると、小さく首を縦に振った。その表情は笑顔だ。
フィギュアスケートの四大陸選手権で、男女を通じて大会史上初めて連覇を達成した紀平梨花は、結果を出すとともに、手ごたえをつかみ、大会を終えた。
出色は、ショートプログラム1位で迎えたフリーの、後半の演技だった。紀平は、冒頭、4回転サルコウを回避し、トリプルサルコウを跳ぶ。
「今日、起きたときの疲労がすごかったです。公式練習でアクセルとかほかのジャンプが歪んでいるのが多くて、それを修正しないといけなかったので、4回転サルコウを練習している場合じゃないなというか。練習が終わったときに4回転を跳ばないと決めました。練習でやらない時点で絶対にやってはいけないと思ったので」
予定していたジャンプを次々に変える。
無事、トリプルサルコウを成功させる。だが次に予定していたトリプルアクセルーダブルトウループは、アクセルが1回転半になるミス。
それでも2つ目のトリプルアクセルにダブルトウループをつけて成功させた紀平は、後半、予定していたジャンプを次々に変える。
トリプルフリップートリプルトウループは、3つ目にダブルトウループをつけ、3連続ジャンプに切り替える。次に予定していたトリプルルッツーダブルトウループーダブルループは、トリプルフリップートリプルトウループに。
これらの変更により基礎点をアップさせた上で、両方のコンビネーションジャンプを成功させ、得点の向上に結びつけた。得点は150点を超え、ショートとの合計得点は232.34点。今シーズンの自己ベストをマークした。
4回転サルコウを跳ぶことなく、トリプルアクセルで失敗がありながらこの得点をあげられた要因の1つには、リカバリーの成功が間違いなくあった。