オリンピックへの道BACK NUMBER
「恩返しするには、成績しかない」
紀平梨花、勝負への執着心と判断力。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2020/02/12 20:00
ショートプログラム1位で迎えたフリーで151.16点、今季自己ベストを更新する合計232.34点をマークし、男女通じて初の四大陸選手権連覇を達成した。
ステップの最中、瞬時に思考を巡らした。
ではジャンプ構成の変更は、いつ決めたのか。
紀平は答える。
「2つ目のトリプルアクセルのあとのステップのときに考えました」
フリーでは、3回転のジャンプは2種類だけ繰り返して行なうことができる。
そのうちの1つ、トリプルアクセルが失敗した。つまり、他の種類の3回転ジャンプを繰り返して実行する余地が生まれた。
どういう構成ならそれが可能か。ステップの最中、瞬時に思考を巡らし、組み替えたのだ。
「リカバリーで大幅に変更して、それがうまくいったのは収穫だったと思います」
と、笑顔を見せた。演技を終えたあと、濱田美栄コーチにも「落ち着いていたね」とほめられたという。
とっさの判断力はまぎれもなく、紀平の成長を示している。
「優勝を狙っていました」
今大会でもうひとつ確認できたことがある。紀平の勝負へのこだわりの強さだ。
「優勝を狙っていました」
そう紀平は言う。4回転サルコウの回避の理由にも、勝負を考えての要素があった。
「入れることで崩れてはいけないですから。どの試合も勝つことを大事にしています」
リカバリーもまた、勝つために、最大限に得点を伸ばしたいという強い意志があってのことだ。
以前の取材でも、結果を出すことへのこだわりを語っていた。その理由も言葉にしていた。