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ハミルトンが語ったF1と環境問題。
「何を信じて、どう選択するか」
posted2020/01/19 20:00
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
「自宅ではガソリン車ではなく、電気自動車に乗り換えた。ハイブリッドじゃなく、完全に電気で動くものだ。所有していたガソリン車はすでに何台か売却したよ。いくつかは大好きな車で、すごく苦労して手に入れたものだったから売りたくなかったけど、カーボンニュートラルを目指すためには、仕方がなかった」
これは、2019年のあるレース期間中に開かれた会見で、環境問題に関して尋ねられた際のルイス・ハミルトンの回答だ。
カーボンニュートラルとは、私たちの活動により排出される二酸化炭素などの温室効果ガスをできるだけ減らし、それでも発生する分の排出量を、森林の管理・育成などの森づくりによって削減・吸収して埋め合わせようという考え方だ。
ハミルトンがこのような発言を行った背景には、自動車産業界がいま厳しい環境問題に直面していることがある。ヨーロッパでは多くの国が今後5年から20年の間に、二酸化炭素の排出量削減のため、国内でのガソリン車およびディーゼル車の販売を禁止すると発表している。
ハミルトンは、自宅だけでなく、別荘にあるガソリン車も売却したという。
「僕はアメリカに3台のメルセデスを所有していたんだけど、それをメルセデスに返して電気自動車に代えてもらった。ロンドンではマイバッハを運転しているけど、それも代えようと思っている。'20年の終わりまでにはハイブリッドが出るはずだから」
F1こそが環境に悪い、という批判にも応答。
この発言には、支持するコメントが数多く寄せられた一方で、批判する者たちも少なくなかった。
その中には、「世界中をジェット旅客機で旅して、サーキットで大量のガソリンを消費するF1サーカスこそが、二酸化炭素を最も排出する環境に悪いスポーツだ」というものもあった。
そういった批判にも、ハミルトンは動じない。
「僕らはみんなそれぞれの意見を持っている。どちらが正しくて、どちらが間違っているかではなく、自分は何を信じて、どう選択するかが大切なことだ」
じつは、ハミルトンは1年以上前にプライベートジェット機を売却。必要のない旅行も極力避けて、飛行機に乗る時間を大幅に減少させている。