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浦和育ちでJ2の7クラブを渡り歩いた
東京V小池純輝、32歳で開花の理由。
text by
海江田哲朗Tetsuro Kaieda
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/10/26 20:00
浦和のアカデミーからJ各クラブを経て、ヴェルディでその花を咲かせている小池純輝。サッカー選手は30代でも成長できるのだ。
永井監督が認める向上心と情熱。
45歳まで現役を続けた永井秀樹監督は言う。
「情熱と向上心を失わずにいられるかがすべて。ゴンちゃん(中山雅史。ジュビロ磐田で得点王2回。当時のJ1通算最多得点である157ゴール、4試合連続ハットトリックなど数々の記録を樹立したストライカー)だって、点を取るための巧さを身につけたのは30を過ぎてからでしょ。自分で勝手に限界を決めて成長に蓋さえしなければ、進歩に終わりはない」
琉球戦、小池の3得点の活躍は鮮烈だったが、それ以上に記憶に刻まれたシーンがあった。東京Vが5-1の大差をつけ、4分間のアディショナルタイムに突入。カウンターを狙う相手選手が視界に入った小池は、ピンチの芽を摘みにダッシュで自陣に戻る。ボールは遠く逆サイドにあり、必ずしもケアが求められる場面ではなかったはずだ。
梶川「純輝くんは走るんですよ」
このプレーが小池純輝を、小池純輝たらしめるものに思える。すでに大勢は決しており、チームの勝利は揺るぎないものになっている。アディショナルタイムは3分を経過し、あとは笛が鳴るのを待つだけの状況だ。3得点を挙げ、チームへの貢献は充分すぎるほど果たした。それでも問題に気づいてしまった小池は放置できない。生真面目さ、実直さが疲れた身体を駆動させる。
もし、小池が利己的な考えの持ち主で、前に攻め残ってもう1点という色気を見せるようであれば、もっと早い時期に2桁得点やハットトリックを達成できたかもしれない。だが、そちらに舵を切っていれば、14年目の充実期を迎えることもなかっただろう。
その人間性が色濃く現れた姿勢について、区切りの今季10ゴール目をアシストした梶川諒太はこう語る。
「それは純輝くんがずっと積み重ねでやってきたこと。そこに走ったとしても、ボールはこないことのほうが多い。戻らなかったとしても、周囲からサボりとは見られない場面です。だけど、純輝くんは走るんですよ。そういうことをやれる選手が、華々しい結果を出したのは自分としても本当にうれしい」
ふたりは公私ともに親交が深く、互いを理解し合う仲だ。友への想いは自身も奮い立たせるものなのか、その梶川もまた、次節のヴァンフォーレ甲府戦で鮮やかなミドルシュートを叩き込み、今季2点目をマークしている。