東京五輪仕事人BACK NUMBER
東京五輪の難題・交通管理に挑む。
国交省の“異才”は何を考えたか。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byShinya Kizaki
posted2019/10/23 07:00
神田昌幸さん。
五輪史上初の大会輸送のIT化。
当初、IOCの専門家はダイナミカルに交通量を調整するやり方を理解できなかったが、実験後に「ファンタスティック!」と驚きの声をあげたという。東京2020の交通対策は話題になり、神田に話を聞くために、2024年パリ五輪の関係者やフランス国鉄の社長が来日したほどだ。
「大会中は関係車両による交通量が加わる。さらなる対策が必要で、首都高の料金を日中は割高に、深夜は半額にするロードプライシングを準備している。現在の日本の道路関係法令では渋滞を抑えるために料金を柔軟に変えることは認められないので、五輪限定の方策を国に検討していただいている」
輸送局の役割はまだまだある。東京五輪は過去大会ではあったオリンピックパークやメディア村がなく、関係者が泊まるホテルが約200カ所に点在している。
「それらを24時間態勢でバスでつなぐことが求められている。ITを使わなかったら複雑な運営は不可能。バスや乗用車にGPSをつけ、場所をリアルタイムで管理し効率的な運行を可能とするシステムを導入する予定です。これも五輪史上初で、大会輸送のデジタル革命と言われています」
他にも出入国管理、物や馬の輸送、宿泊場所の割り振りも役割だ。
「これまで道路をはじめ土木全般、都市計画、都市交通に携わってきましたが、その経験がすべて生きている。東京五輪の開催が決まったとき、家内から『あなたに声がかかるんじゃない?』と言われたんですが、まさにその通りになった(笑)。この仕事に従事する上で大事なのは覚悟。大会を成功させて、みんなで喜び合いたいです」
神田昌幸(かんだまさゆき)
1959年、京都府生まれ。洛南高校卒業後、'86年に京都大学大学院修了、同年建設省入省。倉敷市助役、富山市副市長、国土交通省まちづくり推進課室長、同街路交通施設課長などを経て、'16年7月より東京2020大会組織委員会施設整備調整局長('18年4月より輸送局長)に就いた。景観法の制定やLRT支援制度の創設、健康まちづくりなどを推進。筑波大学客員教授、京都大学大学院及び東京工業大学大学院の非常勤講師を歴任。富山駅駅前広場は'17年度グッドデザイン賞を受賞した。今年7月、TSMを含む混雑緩和に向けた取り組みがテストされた。