“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
セルビアで吹っ切れた浅野拓磨。
「カッコつけることをやめました」
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byJFA/AFLO
posted2019/10/14 19:00
前日練習に笑顔で参加する浅野拓磨(左から2番目)。新天地のセルビアでは「ポジティブにやれている」と語った。
もう、恥ずかしさはない。
「試合に出られない、代表に入れない、怪我をしている、何かを決断しなければいけないなど、すべての状況において、まず『考える』という行動が生まれたことが、僕にとって大きな成長。食事面はどうなのか、トレーニングはどうするのか。今後、年齢を重ねていく上で起こることにどう柔軟に対応していくのか。もちろん悩みは尽きないですし、まだ結論は出ていません。ただ、考えながら行動、決断するという行為自体が、自分を成長させてくれていると感じるんです」
崩れたとしても、また根気強く1から積み上げることで、より強いものができる。積み上げることをやめたものに、成長はない。まさに彼のサッカー人生そのものである。
「もう、恥ずかしさやみっともないなという気持ちはなくなりましたね。周りがどうこうではなくて、常に自分がどうかを考えて取り組む事が、またピッチの上に繋がっていますよね」
冒頭で触れた通り、浅野の表情は終始晴れやかだった。
それを指摘すると、彼は笑顔でこう答えた。
「そうですね、スッキリしましたね。変な言い方をすれば、カッコつけてサッカー選手をすることをやめました(笑)。セルビアに行って、自分の中で変に気にしていた外面を取っ払うことができましたね」
新たな一歩を踏み出すことが大事。
彼のここまでのサッカー人生は浮き沈みが激しかったかもしれない。だが、そのアップダウンの中で彼は失ったものより、得たものの方が多かった。積み重ねてきた過去はすべて自分の大切なベース。決して一過性のものではないからこそ、強固な土台となっている。そして今、浅野拓磨は自分のありのままを信じようと割り切ることができた。
「本当に新鮮な気持ちで代表に臨めています。今の価値ではなくて、将来の価値に向けて新たな一歩を踏み出すことが大事だなと思う。だからこそ、もっと成長をして、パルチザンとA代表に還元していきたい」
もう迷いはない。吹っ切れた男は、軽快な足取りでタジキスタンの地に飛び立った。その先に広がる未来を見つめながら――。