野球善哉BACK NUMBER
日本野球に根強い「投げて育てる」。
球数問題はブルペン、そして練習へ。
posted2019/10/01 11:50
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Hideki Sugiyama
日本の野球界はそろそろ、次の段階へ進むために視野を広げる必要があるのではないか。
夏の甲子園を取材しながら、そんなことを考えた。
3回戦からの連戦となった準々決勝、履正社・岡田龍生監督はエースの清水大成を連投させたのだが、その起用について試合後にこう語った。
「昨日との連戦になるので、先発を違う投手にすることも考えましたよ。その場合は清水を待機させておくということになるんですけど、そうやって先発を回避してもブルペンで待機するということは、そこで投げるわけじゃないですか。どうせブルペンで球数を放らせるんやったら、マウンドに行ったほうがええんちゃうかなと思って先発させました」
清水を連投させた岡田監督を追及したいわけではない。
ここで言いたいのは、「ブルペンで投げて待つ」という調整法が改善されない限り、先発回避をしても球児は投球過多を避けることが難しい、ということだ。
高校野球だけではなく、日本球界全体に言えることだが、「投手の調整法はボールを投げることだ」と言う考えが根強い。先日のU-18W杯でも、登板までに肩を何度も作るケースが多く見られた。
これは、実は日本特有の現象である。アメリカをはじめ多くの国では、登板までにブルペンで投げ込む回数が1回だけである。
ブルペンの調整は日本だけが違う。
ホワイトソックスなどでクローザーを務めたヤクルトの高津臣吾二軍監督がかつてこんな話をしていた。
「メジャーのブルペンは、バッター3人くらいの時間で肩を作らないといけない。4番バッターのところで登板するなら、1番バッターの時に電話がかかってくる。僕らはそこから準備に入る。
短い時間でいきなり準備するやり方に最初は戸惑いましたけど、そのやり方になじんでいくとむしろ非常にやりやすいんです。でもね、ブルペンの調整法がメジャーと違うのは日本だけなんですよ。僕は台湾や韓国でプレーしましたけど、どこもみんなメジャーと同じなんです」
高津氏やロッテの吉井理人氏などメジャーでの経験を持つコーチも増えてきたことで、プロ野球でもブルペンでの投球数を制限するチームが出てきたが、まだ一般的とは言い難い。