「ああ見えてよくしゃべってくれます」

　だが有事の際には颯爽とチームに現れ仕事をするといったイメージが石川にはある。

　とくに今季、DeNAは春先に10連敗と苦しんでいたが、石川は4月29日に一軍登録されるとスタメンに抜擢され1本塁打を含む3安打と大活躍し、チームの連敗脱出に貢献している。

　以来、石川は一軍にいつづけており、今やチームは優勝争いをするようになっている。もちろん打率2割前後を行き来している石川が戦力として常に勝利に貢献しているわけではないが、キャプテンの筒香嘉智がいつになくリラックスをして話している姿や、他の選手たちの様子を見ていると、石川がチームに与えている影響は大きいように思える。

　石川と接する機会の多い柴田竜拓は次のように証言する。

「ああ見えてよくしゃべってくれますし、優しい先輩なんです。すごく目配りや気配りができる方で、いろんな選手に声をかけていますよ。僕自身、いいパフォーマンスをするためのアドバイスをもらったりして、いい雰囲気、いい状態でゲームに入れるんですよね。

　まあ、とくに具体的なことを言うのではなく、何気ない一言というか、タイミングが良くて自然な感じで背中を押してくれるんです。チームを変え、空気を変え、流れを変える人。難しいとは思うけど、僕もそういう部分を盗みたいですよね」

野球を知っている、という優位性。

　石川ならではの特異性。プロの選手に失礼を承知で言わせてもらえば、石川は、DeNAにとって“ラッキーチャーム”（幸運のお守り）のような存在なのかもしれない。

　今季のDeNAはソトの起用法もありセカンドの守備員が安定しない状況にあるが、若手選手との入れ替えもなく石川を一軍に帯同させつづける必要性を、青山道雄ヘッドコーチは次のように教えてくれた。

「グラウンド内で活躍することは大切ですが、ベテランにはグラウンド外でやるべき仕事があり、我々としてもチームには石川が必要だという判断です。レギュラーではないので派手な仕事は少ないけど、プロとしての姿勢や走塁の奥深さをよく知っている選手なので、それを若い選手たちに伝えてもらいたい。

　まだ若いチームだけに野球を知っている選手が少ないというか、打って、走って、守るだけでは本物のチームにはなれない。優勝を狙うためにも、よく野球を知る石川にはそういった部分を背中で示してほしいし、その役割は十分に果たしてくれていると思います」

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