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長谷部は始動、香川の移籍はどこに?
「寂しいよ。シンジは英雄なんだぜ」
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2019/07/07 17:00
昨季途中にベシクタシュへ期限付き移籍していた香川真司。新シーズンの所属先はいつ決まるのか。
街の人々が誇るクラブ、そして香川。
ドイツにおける香川の認知度は、日本人が想像する以上ではないでしょうか。昨季は、シーズン序盤戦によくドルトムントのホームで取材をしました。ドルトムントは小規模な街で、これといった観光地や商業施設もありません。
ただし、ここには国内屈指の人気を誇るプロサッカークラブがあり、街の人々は誇りを持って我らがチームを支えています。街の中心部にあるレストラン、カフェ、パブには、必ずドルトムントのチームエンブレムをかたどった旗やマフラーが飾られていて、時にはお店を訪問した選手のサインなども掲示されています。
当然香川のサインもあり、あるレストランでは店主と肩を組んで微笑む彼の写真が壁に貼られていました。
「寂しいよ。シンジは英雄なんだぜ」
ナイターゲームでは終電がなくなるので、事前にホテルを予約しています。ある試合の日、対応してくれたホテルマンが「カガワ~」と発したあと、悲しそうな顔で「シンジは今日も試合に出ないのかね? 寂しいよ。彼はこのクラブの栄光を支えた英雄なんだぜ」と呟きました。
結局、その日も香川は出場しなかったどころかベンチ入りすらせず……。取材が徒労に終わってがっくりと肩を落としてホテルへ戻ると、さっきのホテルマンが僕を出迎えてくれて、優しく声を掛けられました。
「何も言わなくていいよ。俺はチームが勝って嬉しいけど、日本人の君は、仕事の目標を達成できなかったんだよね。分かっている、分かっている。ビールでも飲むかい? タダじゃないけど(笑)」
ドルトムントの住民が親身になってくれるのは、すべてシンジ・カガワのおかげ。僕は、ドルトムントの方々との触れ合いを通じて香川真司というサッカープレイヤーの偉大さを感じ取ることができました。