野球のぼせもんBACK NUMBER
イチローに人生を当てはめた男。
ホークス上林誠知が貫く51番への愛。
posted2019/03/26 17:30
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Getty Images
イチロー引退の報が流れた時、福岡ではホークスの番記者たちも慌ただしく動いていた。惜別コメントが必要になるからだ。翌朝には早速、王貞治会長にカメラの前に立っていただいた。
オリックス時代の師匠である新井宏昌二軍打撃コーチ、そして'09年の第2回WBCを共に戦った内川聖一にもマイクが向けられた。
内川については、雑誌Number974号『イチローを見よ』の中でインタビューを担当させてもらった。
彼がイチローを敬愛する気持ちを余すことなく語ってくれた同号のページをめくると、上原浩治、福留孝介、岩隈久志らメジャー経験者がずらりと並び、清原和博氏や張本勲氏といった球界のレジェンドも名を連ねるという豪華なラインナップだった。
その中で筆者はもう1人の選手にもインタビューを行った。
上林誠知である。
イチロー愛がとにかく深い男。
この顔ぶれの中に上林か、と正直驚いた。とはいえ、おそらくイチロー愛の深さでは誰にも負けていないのではなかろうか。ホークスで、そして常連となった侍ジャパンでも「51」を背負う彼こそネクスト・イチローに一番近い男である。
取材中には堂々と「僕はイチロー信者です」と言いきった。普段クールに決める男が熱っぽくイチロー愛を語ってくれたが、行数の関係ですべてをお伝えできなかった。その言葉のいくつかをここで紹介したい。
野球に出合った小学生の時から強い憧れを抱いていた上林はイチローについて「自分という人間であり野球選手を作り上げてくれた人」と表現した。その思いは少年時代からで、当時のエピソードを明かしてくれた。