ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
同期の2冠王者を追う苦労人が散る。
谷口将隆を再び世界戦でみたい。
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byKyodo News
posted2019/02/27 11:30
世界の壁に弾き返された谷口将隆。しかし成長のペースは人によって異なる。再び頂上を目指してほしい。
「谷口はいい選手だが、想定の範囲内」
サルダールは決してフィジカルが強い、スタミナがある、というタフなタイプではない。ゴリゴリと削っていけば終盤に失速し、逆転できる可能性は十分にある。挑戦者陣営の考えはよく理解できた。
この作戦変更はいったんはうまくいきかけた。「むこうが面食らっているのが分かった」(谷口)。しかし、谷口がいい流れをつかみきれなかったところが、まさに実力の差なのだろう。
ほどなく対応したサルダールは、前がかりになった谷口の打ち終わりに右のカウンターをポンポンと合わせ、打っては動くボクシングを機能させた。谷口はもともとスマートなタイプで、ひたすら前に出て相手を削るようなボクシングを得意としていない。
結局、最後までサルダールのペースを乱すことはできず、世界的レフェリーであるケニー・ベイレスの手も煩わせることなく試合は終了。スコアは118-110が1人、117-111が2人だった。
「すごく満足している。谷口はいい選手だが、彼のボクシングは想定の範囲内。すべては計画通りだった」というチャンピオンの言葉が憎らしかった。
2階級王者の京口と同年デビュー。
谷口は2016年、同じ関西学生リーグの大商大でキャプテンだった京口紘人とともに、大きな期待を背負ってワタナベジムからデビューした。京口と谷口をスカウトし、プロで指導する井上トレーナーは「当時は京口よりも谷口のほうが技術的にはよかった」と証言する。
ところが、2人のプロキャリアは明暗を分けた。京口はわずか1年あまりでIBF世界ミニマム級王者となり、その後も無敗をキープしながら、昨年大みそかにはWBAライト・フライ級スーパー王座を獲得、2階級制覇を達成した。対照的に谷口は出世レースで大きく後れを取った。