ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
同期の2冠王者を追う苦労人が散る。
谷口将隆を再び世界戦でみたい。
posted2019/02/27 11:30
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Kyodo News
WBO世界ミニマム級タイトルマッチが26日、東京・後楽園ホールで行われ、同級2位の谷口将隆(ワタナベ)は王者のビック・サルダール(フィリピン)に判定負け。世界初挑戦でタイトル奪取はならなかった。
日本国内で2019年初めての世界タイトルマッチへの関心は決して高くなかった。クラスが最軽量級のミニマム級であり、挑戦者が無名の谷口だったから、これは仕方のないことだろう。
しかし、注目度の高さと、試合の面白さはイコールではない。ホールに足を運んだ1693人がこの試合をどう感じたかは分からないが、長くボクシングを見ている者にとっては、それなりに味わいのある試合だった。
自信のあるジャブでまさかの劣勢。
立ち上がりは静かだった。サルダールはアマチュアでキッズ時代も含めると500戦、谷口も龍谷大の主将を務めるなど、アマで74戦のキャリアを積んでいる。ともに技術戦に自信を持っているがゆえに、出だしはフェイントをかけ合って互いの様子を探り、相手が出てきたところにパンチを合わせようとしていたのだ。
双方とも手数が少ないながら、スピードのあるサウスポー、谷口は鋭い踏み込みから左ストレートをボディに打ち込み、コンディションの良さをアピールした。リングサイドからはどちらが優勢とも言い難かったが、試合後に谷口は次のように明かした。
「ジャブの差し合いには自信があったので、それをやったけど、向こうの左(ジャブ)の使い方がうまかった。幸先が悪いなとは思いました」
イーブンに見えた2ラウンド、わずかにして大きな差をリングで対峙する両雄は感じていた。3回に入るとチャンピオンの表情にはっきりと自信が宿る。わずか数センチ、あるいは0コンマ何秒という領域をサルダールが支配したのだ。思うように事を運べない谷口は6回、距離を詰めて接近戦を試みた。「あのままではポイント」は取れない。井上孝志トレーナーが決断した。