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なぜ阪神に“甲斐”が育たないか。
藪恵壹が見る猛虎の課題・正捕手。
text by
藪恵壹Keiichi Yabu
photograph byKyodo News
posted2018/11/17 10:00
2003年、2005年のリーグ優勝時には矢野が正捕手として君臨した。また、1985年の日本一時も木戸克彦がいた。
捕手をドラフト上位指名せず。
ただ、こうして現有戦力を見ていても、やはり積年の課題が解消されそうな気配はありません。その要因としては、やはり「ドラフト」と「育成」にあるような気がしています。
例えば、3連覇しているカープは會澤翼という正捕手が育ったにもかかわらず、昨年のドラフト1位で高卒の大型捕手である中村奨成を獲得しています。
一方、タイガースは正捕手不在が叫ばれているのに、捕手の最上位指名は2004年に自由枠で岡崎太一を獲得して以来、14年間もありません。高卒の最上位となれば、1997年の中谷仁までさかのぼることになります。
今年のドラフトでも、捕手出身の矢野監督だけに、亜細亜大の頓宮裕真捕手(オリックスが2位で指名)を上位で指名するのかなと思って見ていたのですが、そうではなかった。
何より深刻なのは「育成」。
そして、ドラフトより、もっと深刻なのは「育成」でしょう。タイガースでは数年前から二軍改革をしようということで、育成計画はフロント主導になりました。
二軍のスタッフは日々、細かくレポートなどを提出するのですが、これに対して球団からのフィードバックはあまりない。さらに「2年で結果を出そう」という基本方針があったのですが、これでは長期的、計画的な育成というのは難しいでしょう。
何よりも大きかったのは、昨年、掛布二軍監督を退任させたことだと思います。掛布さんは「二軍だってプロなんだ」ということで、ある程度、選手の自主性、プロ意識を促すやり方で、若手も育ってきていました。それをわずか2年で退任させてしまったのでは、継続してきたものも失われてしまいます。
セ・リーグ王者の機動力を封じたホークスの甲斐を見ていると、カープ攻略の糸口が見えてきますが、残念ながらタイガースに甲斐はいません。そして、そういう存在をつくるためには球団フロントも含めた根本的な部分の改革と、継続性が必要なのではないでしょうか。