ひとりFBI ~Football Bureau of Investigation~BACK NUMBER
連覇目前、“ドSな川崎”の動力源。
前門の虎・憲剛と後門の狼・守田。
posted2018/11/09 11:30
text by
北條聡Satoshi Hojo
photograph by
AFLO
前門の虎、後門の狼――。
ついにJ1連覇へ王手をかけた川崎フロンターレの強みが、ここにありそうだ。
一難去って、また一難。1つの災いを逃れても、別の災いに遭うというたとえ。川崎Fと戦う相手は総じて、攻めに転じても守りに回っても、この厄介な事態に直面する。前後に並んだ2つの門を、どうにもくぐり抜けることができない。
前門(トップ下)の虎=中村憲剛
後門(ボランチ)の狼=守田英正
彼らがそろってピッチに立ったときの川崎は強い。本当に強い。敵陣で延々とボール保持と奪取を繰り返し、相手を一方的に攻め立てる「ドSの癖」が全開になるからだ。
先週末、ホームで開催された柏レイソル戦は、好例だろう。3-0というスコア以上の快勝。反撃どころか、まともにボールを持たせてもらえない柏が気の毒になったほどだ。鬼門は、やはり「虎と狼」だった。
実は川崎、10月24日の天皇杯準々決勝で、がっちり守りを固めて速攻を狙うJ2のモンテディオ山形に苦杯をなめた(2-3で敗退を喫した)ばかり。これに着想を得た(と思われる)柏は山形と同じ人海戦術(5バック)を採用し、二匹目のドジョウを狙う魂胆だった。
山形戦では川崎が「別人」に。
だが、この日の川崎は「別人」と言ってもよかった。中村、守田の関係性がハマらなかったのである。
中村という「虎」が前門にいないと、バグ(不具合)が生じやすい。うまく入らないからだ。カウンタープレスのスイッチが。ボールを失うと、後手に回って逆襲の余地を与えてしまう。
日本代表の9月シリーズで負傷した守田が戦列を離れ、中村をボランチに据えるケースが増えると、そうした展開の連続となった。しかし、守田がボランチに復帰し、中村がトップ下に戻ると、事態が好転。急先鋒の中村がプレスのスイッチをガンガン入れて、敵陣が格好の「狩り場」となった。