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「スポーツの本質は遊びでしょう?」
ラグビー伝説の名将・春口廣の今。
text by
多羅正崇Masataka Tara
photograph byMasataka Tara
posted2018/11/11 09:00
なんとも楽しそうに子供たちにラグビーを教える春口廣氏。ストイックになりがちな日本スポーツ界で貴重な存在だ。
1対1ではじまったラグビーアカデミー。
横濱ラグビーアカデミーは、そんな監督時代の2003年、地域総合型スポーツクラブとして設立。主にラグビーの普及を目的として、タックルの代わりに腰ヒモを取るタグラグビーなどを行った。
「タグラグビーを普及させようとしている方がいて、『グラウンドがない』というので、提供しようと。ラグビーを普及させるには、より安全にプレーできるタグラグビーがいいと思ったんだよね」
春口監督は関東学院大の釜利谷グラウンドを開放。大規模大会も定期開催した。しかし2015年、春口さんの関東学院大の定年退職にともない、アカデミーの活動拠点がなくなった。
グラウンドがなければプレーはできない。プレーができなければ子どもたちはやってこない。それでもアカデミーは2015年、再スタートを切った。
「ある男の子と1対1で、もう一度始めたんですね。でもラグビーは1人じゃできないでしょう。それで仲間を増やそう、となってね」
「日本のスポーツが育たないのは」
少しずつ子どもは増えた。ただ3年が経った現在も練習拠点は見つかっておらず、現在は海の広場の隅を個人として使用している状況だ。
大人数で走り回るスペースが確保できないため、積極的な生徒募集をすることができない。アカデミーの参加人数が5人程度にとどまっているのはそのためだ。
「日本のスポーツが育たないのはフィールドだよね。場所の取り合いで、ケンカなんか見ちゃうとね……。学校の校庭だってひとつしかなくて、砂混じりで、転んだら怪我しちゃうでしょう。国立競技場を立派にするのもいいんだけど……。我々に必要なのは、整備されていて、いつでも使える場所」
監督時代の春口さんは、積極的に釜利谷グラウンドを開放した。いま逆の立場となって、かつての自分のような存在は稀有だと知ることになった。