オフサイド・トリップBACK NUMBER
2列目もシステム変更も、肝はここ。
代表のボランチにかかる高い要求。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byJFA/AFLO
posted2018/11/09 10:30
ボランチの中心を担うことになりそうな柴崎岳。長いパスが通せることは、攻守の切り替え速度に大きく貢献する。
ワイドに開く前線を支えるために。
たとえていうなら、ボランチの存在は扇子の要(かなめ)に近い。
扇子を大きく広げて、前に強く風をあおぐためには頑丈な要がしっかり根底で支えなければならない。不測の事態が起きた時に、すばやく扇を畳んで対応できるかどうかも要の良し悪しにかかってくる。
ましてや今の日本代表では、森保監督の下で新たな攻撃陣がピッチをワイドに使いながら、アグレッシブかつスピーディーにゴールを目指すようになった。チームが前がかりになればなるほど、攻撃においても守備においても、試合の流れを変えられるボランチが不可欠になってくる。
ところが従来の日本サッカー界には、マケレレのような潰し屋はいなかった。攻守両面でピッチ上に君臨できるMFとなると、数は少なくなるのが実情だ。
結果、日本のサッカー界では「ゲームメイカー」と「守備の強いMF」のコンビ、あるいは「オールラウンドにプレーできるMF」の中から、攻撃寄りの選手と守備寄りの選手を選び、ボランチとして組み合わせるパターンが一般的になってきた。
たしかに、イングランド代表やプレミアのクラブでも、優れた「4番」の育成は最大のネックになっている。またシステム論的に考えれば、中盤に2枚のボランチを起用した場合、特性が分かれてくるのは自然かもしれない。
だが3バックであろうと4バックであろうと、あるいは可変システムを踏襲する/しないにかかわらず、日本代表の進化を加速しようとするなら、やはり中盤も牽引役になっていく必要がある。
どの選手もスケールアップが必要。
その意味でも、柴崎や遠藤をはじめとするボランチにかかる期待は大きい。
ベルギーに渡った遠藤は、持ち前のカバーリング能力に磨きをかけながら、攻撃にももっと絡むようになった。おそらくチームメイトに触発されたのだろう。ウルグアイ戦だけをとっても、後半は明らかに貪欲さが増していた。だがスケールアップを目指すなら、さらに攻撃のセンスを磨くことが求められる。これは無理難題でない。すでにその片鱗は、湘南時代から垣間見せていた。
柴崎はロシア大会で一皮剥けて日本代表躍進のキーマンの1人となったが、2022年のカタール大会でベスト8進出を果たすためには、守備でも攻撃でも絶大な存在感を発揮しなければならない。それだけのポテンシャルは秘めている。
むろんアントラーズのACL決勝進出に貢献した三竿や、日本代表では常連になっていた大島僚太、山口蛍などもレギュラーの座に割って入ろうとするだろう。青山はベテランならではの経験値とリーダーシップでチーム全体に森保イズムを注入していけるし、逆に若い五輪代表組も、我こそはチームの舵取り役だとアピールしようとするはずだ。
ウルグアイ戦の後、青山は森保監督のチーム作りの現状について語ってくれた。
「もともと個(の能力)はあるわけだし、しっかり細部に目を通して、チームとしてうまく出せるかどうかになると思います。それがうまく出せているということは、(森保監督の)チーム作りがうまくいっているんじゃないですか」
「これから先、さらに大きな伸びしろが期待できますね?」と質問を継ぐと、青山は誇らしげに胸を張って断言した。
「もちろん。(チーム作りは)まだ始まったばかりですから」
ボランチのポジションも、4年後に向けた大きな伸びしろの1つになっていくのは間違いない。はたして熾烈なレギュラー争いに勝ち残り、チームの「要」として、中盤から日本代表を進化させていくのは誰か。11月のベネズエラ戦とキルギス戦は、そんなことも考えながら注目したいと思う。