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アパパネに続き、アーモンドアイで
牝馬3冠達成した国枝調教師の手腕。
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2018/10/19 16:30
秋華賞優勝の表彰式で喜びを分かち合うアーモンドアイ陣営。
国枝師は泰然自若としていた。
結果的に追い出された彼女は、上がり33秒6という数字以上に、強烈に見せる脚を披露し、牝馬3冠を達成するわけだが、皆がハラハラしたであろう場面にも、国枝師は泰然自若として見ていたと語る。
「スタートしてすぐに折り合いがつきました。この時点で、『まぁ、大体大丈夫かな……』と思えました。だから後は全然ドキドキしないまま見ていられました」
厳しい位置取りになっても、前との差がなかなかつまらなくても、かなりの差が開いたまま直線に向いてもまだ、指揮官は「安心して見ていた」と語る。そして、それが単なる強がりでない事を、アーモンドアイが証明してくれた。
かくして史上5頭目の牝馬3冠馬が誕生したわけだが、ではなぜ国枝師はそれだけ落ち着き払ってこの競馬を見ることが出来たのか? 話していると大きな理由が2つある事が分かる。
1つは彼女の類稀なる能力の高さをどこまでも信じていた事。これはレース後の共同会見で述べた「他の馬との能力差がかなりあると感じていたので、その力を出せればまず大丈夫だろうと思っていた」という言葉で察せられる。
“先輩”アパパネでの経験。
そしてもう1つは、先輩3冠馬であるアパパネでの経験だろう。
「オークスは1着同着でかろうじて3冠への権利をつなげました。秋華賞前に走ったローズSでは4着と人気を裏切ってしまいました」
アパパネが迎えた秋華賞は、そんな経緯があって臨んだ最後の1冠だった。そのため、普段、山のごとく動じぬ姿勢を見せる国枝師をしても、どっしりと構えていられたわけではない事は想像に難くない。
それでもアパパネは見事に牝馬3冠を達成した。本番ではしっかりと仕上げて勝たせる事ができた。その時の経験が自信と矜持を生んだのだろう。それが体現されたのが、今回の3冠を前にした国枝師の態度だったのではないだろうか。