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絶対王者バイエルンがまさかの失速。
原因は選手層、アンチはホクホク顔。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byUniphoto Press
posted2018/10/05 10:30
ミュラー、ノイアーらを擁して相変わらずの陣容であるバイエルン。しかし今ひとつ勝ち点を稼げていない状況だ。
コバチ監督の戦術は機能しているが。
細部を検証すると、今季のバイエルンの停滞にはそれなりに理由があるように思えます。
コバチ監督の手腕は、今のところ疑問符が付く点はありません。フランクフルト時代に3バックを好んで用いた指揮官はバイエルンで4-1-4-1を採用していますが、これは現有戦力の個性を考慮したもので、選手たちも違和感なくプレーできているように見えます。
数字上もリーガ6試合で12得点。1試合2点ペースです。失点は6試合5失点で1試合1失点以下と立派なものです。ボールポゼッション率は常に相手を上回り、チャンス創出の数も2桁は当たり前。
しかし敗れたヘルタ戦は、相手が6本のシュートで2点決めたのに対し、バイエルンは25本もシュートを打ち込んでノーゴールに終わりました。
負けているチームの常套句である「チャンスで決めなきゃダメ」を地で行くわけですが、チーム戦術はそれなりに機能しているわけで、やはりコバチ監督が掲げるチームスタイルの是非が問われる段階には至っていないように思えます。
長谷部「ニコは野心を持っている」
先日フランクフルトの長谷部誠選手と話をする機会がありましたが、彼はコバチ監督について、こんな印象を述べています。
「ニコは監督として、選手と同じくらいの野心を持っている人物だと思う。彼はとにかく『絶対に成功するんだ』と思い続けていて、だからこそバイエルンの指揮官にも迷いなく就任したんだと思います。また、彼は現役時代にバイエルンでプレーした経験もあるからクラブの環境や雰囲気はよく分かっているだろうし、スター揃いのチームを上手くコントロールできると思います」
指揮官の素養に疑いの余地がないなら、問題は今季のバイエルンの選手層にあるのではないでしょうか。
今季のバイエルンは誤算続きです。
移籍市場ではMFレオン・ゴレツカ(←シャルケ)を獲得し、レンタル移籍させていたMFレナト・サンチェス(←スウォンジー)、MFセルジュ・ニャブリ(←ホッフェンハイム)を呼び戻しました。しかし、DFフアン・ベルナト(→パリSG)、MFアルトゥーロ・ビダル(→バルセロナ)、MFセバスティアン・ルディ(→シャルケ)らを放出しています。
またDFジェローム・ボアテンクは放出の可能性が取り沙汰され、ボアテンク自身もバイエルン首脳陣のウリ・ヘーネス会長やカールハインツ・ルンメニゲ代表取締役社長らの、自らの移籍をほのめかす言動に不信感を覚えるなど、その関係性が冷えつつあります。