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山本KID、突然の死。その衝撃と
RIZIN・那須川vs.堀口に続く物語。 

text by

橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

PROFILE

photograph bySusumu Nagao

posted2018/09/26 11:00

山本KID、突然の死。その衝撃とRIZIN・那須川vs.堀口に続く物語。<Number Web> photograph by Susumu Nagao

2012年のVTJで弟子の堀口恭司についていた山本“KID”徳郁。その死は格闘技界を超え、多くの人に悲しみをもたらした。

KID流の“放任”で育った堀口恭司。

 リップサービスをするタイプではないが常に落ち着いていた。感情の起伏や機嫌の良し悪しを表に出さないのだ。常に自信満々、恃むは己の拳のみというイメージもあったから、試合当日、会場入りする前に神社に参拝すると聞いた時は意外だった。

 指導者としてのスタンスは、いわば放任だ。練習するヤツはするし、しないヤツはしない。KRAZY BEEは「苦しくてもみんなで頑張ろうぜっていうより、あくまで自分しだいっていう雰囲気なんです」とRIZINファイターの矢地祐介は言う。上下関係にとらわれず、選手同士自由にものが言える雰囲気のジムでもあるそうだ。

 そんなKRAZY BEEで、プロデビュー前から「(放っておいても)大丈夫でしょ」と言われてきたのが堀口恭司だ。修斗で世界王者となりUFC参戦、現在はRIZINでトップを張る彼のファイトスタイルは伝統派空手をベースとする独特なもの。練習拠点をアメリカに移してからも定期的に帰国、空手の稽古は欠かしていない。自分で考え、自分で工夫して堀口は強くなった。それはプロとしての最初の指導者・KIDがいたからこそだったのではないか。

 堀口は9月30日のRIZIN(さいたまスーパーアリーナ)で“神童”那須川天心と闘う。ルールは3分3ラウンド・延長1ラウンドのキックルール。トップ選手同士の“立ち技他流試合”は、14年前の魔裟斗vs.KIDを思い起こさせるものだ。そこに偶然にも「KID追悼」の意味合いも加わることになった。

 またこの大会には、美憂も参戦。もともとはKIDにエールを送るためにと主催者に直談判しての出場だったが、モチベーションは「勝って弟にいい報告を」へと変わった。

9.30RIZINは「句読点になる大会」。

 榊原は9.30RIZINを「長く格闘技に関わってきましたが、句読点になる大会になると思います。事前の予想よりも大きな熱、見なければいけないという雰囲気がある」と語っている。

 那須川vs.堀口の発表後にチケットの一般販売が始まると爆発的な売れ行きを示し、増席を重ねて団体史上最大の観客動員が確定している。

 観客数はおよそ2万5000人になるだろう。そして、おそらくその全員が、KIDのことを思いながら席に着くのだろう。

【次ページ】 アンディ・フグが亡くなった時も……。

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