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「引退」の二文字はまだ早い……。
村田修一、今季NPB断念と現役の意地。 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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photograph byKyodo News

posted2018/08/02 11:30

「引退」の二文字はまだ早い……。村田修一、今季NPB断念と現役の意地。<Number Web> photograph by Kyodo News

「引退」という言葉を明確に否定しつつも、プロとして来季プレーすることの難しさも同時に語った村田修一。

7月31日までに2度も故障を……。

 再出発の地に選んだBCリーグ・栃木ゴールデンブレーブスで、ようやく「男・村田」の看板を下ろして、野球をしているように映った。打つ、守る、走るだけでなく、若い選手に身振り手振りで指導する姿も見えた。「本当に野球が好きな子」と表現したチームメートに感化されてか、純粋に白球を追っているようだった。動きは37歳も、心はプロ入り前に戻ったのかもしれない。

 ただ、NPBへの移籍期限の7月31日までという期限のある中で2度、右足を痛めたことは大きな誤算だったに違いない。時間が限られた中でも、修一は前を向き続けていたはずだ。

 まだ傷が癒えない5月12日、巨人の三軍との試合は「男・村田祭り」と銘打たれて行われた。

怪我を押して立った打席で本塁打。

 負傷中で断ることもできたが「チームのためなら」と開催に承諾。

 当日は観客席へ向かってのマイクも握った。

 本当はまだ打撃ができる状態でなかった。それでもこの試合の「顔」だっただけに、試合展開次第ということになっていた打席に立つことも厭わなかった。

「走れないからフライアウトを打ってくる(笑)」

 無理を押して立ったその打席で、これまで何度も何度も描いてきたきれいな放物線を描くアーチを左中間に放った。足の不安は、いつもよりもゆっくりとダイヤモンドを一周していた姿からもひしひしと伝わった。

「これがあるからやめられないんだよな!」

 この時点で、ホームランアーティストとしての本能はまだ色あせていなかったはずだった。

【次ページ】 「小学3年から野球を続けて……」

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村田修一
栃木ゴールデンブレーブス
読売ジャイアンツ

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