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壮大な自然と世界のワザに息をのむ。
“登山発祥の地”でリードW杯が開幕。 

text by

津金壱郎

津金壱郎Ichiro Tsugane

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photograph byAFLO

posted2018/07/27 11:00

壮大な自然と世界のワザに息をのむ。“登山発祥の地”でリードW杯が開幕。<Number Web> photograph by AFLO

アルプスの壮大な山脈を背景に熱戦が繰り広げられた。

世界を狙えるリードクライマーの台頭。

 男子は、開幕戦をカウントバック(前ラウンドの順位)で表彰台を逃したイタリアのステファノ・ジソルフィが決勝戦で唯一の完登を決めて今季初優勝。2位には準決勝1位通過だったヤコブ・シューベルト、3位にはアレックス・メゴスが入った。

 だが、この大会でハイライトと言えるのは、田中修太と本間大晴が8名で争う決勝戦に進んだことだ。決勝の競技開始前にステージ上で行われるファイナリスト紹介では、両選手ともに狐につままれたような表情をしていたが、決勝では初めて味わう緊張感のなかで、 “自分らしいクライミング”を見せた。最終順位は田中修太が6位、本間大晴が7位となっている。

 日本国内ではボルダリングが人気だが、リードでも活躍する若手選手が出てきたことで、このあとの日本国内における注目度も上がってくるだろう。

 また、この大会ではボルダリングを得意種目にする五輪強化選手の18歳・土肥圭太が自身2度目のリードW杯で、初めて準決勝に進出した。この結果は開幕戦でのふたりの活躍に刺激を受けたことは間違いない。ユース年代の彼らが切磋琢磨しながら、シーズン終盤までにどんな成長曲線を描くかは見届けてもらいたい。

 ヴィラール大会、シャモニー大会ではリードW杯との併催で、スピードW杯の第4戦、第5戦も実施された。2年後の東京五輪のコンバインド種目を狙う海外選手たちとともに日本勢も出場し、男子では土肥圭太、女子では野中生萌、野口啓代、小武芽生がシャモニー大会で自己ベストを更新。とりわけ、野中生萌は自身が持つ日本記録を9秒28まで縮めた。スピード記録会ではなく、大会スケジュールのなかで自己記録を伸ばしていることは、タイム以上に評価したいポイントだ。

 リードW杯はフランス・ブリアンソン大会での単独開催を経て、イタリア・アルコで7月27日・28日にスピードW杯との併催で第4戦が行われる。

――その後は、8月17日・18日のドイツ・ミュンヘンでのボルダリングW杯や、9月6日~16日までの世界選手権を挟み、リードW杯は9月29日・30日のスロベニア・クラーニ大会から再開される。

 時代の転換点では予想を超えるドラマがしばしば起こるものだ。これからシーズン本番を迎えるリードW杯でも、さらなる驚きの展開が待っているはずだ――。

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