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壮大な自然と世界のワザに息をのむ。
“登山発祥の地”でリードW杯が開幕。 

text by

津金壱郎

津金壱郎Ichiro Tsugane

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photograph byAFLO

posted2018/07/27 11:00

壮大な自然と世界のワザに息をのむ。“登山発祥の地”でリードW杯が開幕。<Number Web> photograph by AFLO

アルプスの壮大な山脈を背景に熱戦が繰り広げられた。

モンブランの麓の渓谷で新時代が。

 シャモニーはモンブラン山群の麓に位置し、現在の登山という形態が1786年8月8日にモンブランが初登頂されてから始まったとされているため、“登山発祥の地”とされている。1924年に第1回冬季オリンピックが開催されたこともあり、冬になると世界有数のスキーリゾートとして多くの観光客を集める。夏場も登山やハイキング、パラグライダーやラフティング、キャニオニング、マウンテンバイクなどの山岳スポーツを楽しむ人たちで賑わっている。

 そんなマウンテンスポーツへの理解の深い地で行われた大会は、新たな時代の幕開けを予感させるものになった。

 女子はジェシカ・ピルツが、リードW杯で初優勝。2012年にリードW杯スロベニア・クラーニ大会でデビューしてから着実に力を伸ばし、昨季はリードW杯年間ランク4位になった21歳が笑顔の大輪を咲かせた。

 女子リード種目はヤーニャ・ガンブレットが2016年にレギュラー参戦してからは彼女の独壇場で、それをアナク・ヴァーホーヴェンとキム・ジャーインが追いかける構図ではあったものの、優勝の行方は“女王のミス待ち“という側面が強かった。

 しかし、今回のジェシカ・ピルツは、準決勝も最高高度を記録し、決勝では唯一の完登者となって、力で女王をねじ伏せての優勝。今シーズンはボルダリングW杯にも初めて複数大会に出場し、5月中旬以降はリード・シーズンに向けてトレーニングに集中してきた成果が実を結んだ。この初優勝を機に女王との2強時代に持ち込む勢いを見せている。

 また、シャモニー大会では小武芽生が、リード種目のポテンシャルの高さを見せた。野口啓代も2戦連続で決勝進出を果たしているが、小武の準決勝でのパフォーマンスは世界トップレベルの背中を視界に捉えるものがあった。多くの選手が苦戦した38手目をあっさり超えて3位タイで進み、決勝戦は5位。開幕戦からの結果がフロックでないことを証明した。

 ボルダリングW杯では距離感の遠い課題に苦しめられることも多い身長154cmの小武は、リードW杯では十分な練習が積めない中で臨んだ2016年の2大会、昨年の3大会の全戦で準決勝に進出していた。昨年末に、「身長が私と同じくらいの選手が活躍していて、すごく刺激を受けたので、来年は本気でリードW杯も狙っていきたい」と意欲を見せていた小武は、今季は開幕前にオーストリアで合宿を張って万全の準備をして臨み、開幕戦で自身初の決勝進出を果たした。彼女がこの先のシーズンに、どこまで飛躍するかは注目したい。

【次ページ】 世界を狙えるリードクライマーの台頭。

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