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山崎康晃はなぜ魅力的な守護神か。
度胸と「ありがとう」が言える愛嬌。
posted2018/07/02 08:00
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph by
Tetsuo Kashiwada
チーム内でも屈指の人気を誇るクローザーは昨年の日本シリーズでの経験をバネにして、4年目のシーズンもハマスタのファンを沸かせる。
Number949号(2018年3月29日)の特集を全文掲載します!
山崎康晃はルーキーイヤーからいっきにスターダムにのし上がった。開幕からクローザーに抜擢されると、真っ向勝負でセーブを積み上げ、ファンが飛び跳ねて登場を出迎える康晃ジャンプはほどなく横浜スタジアムの名物となった。オールスターにはファン投票1位(セ・リーグ、抑え部門)で1年目から3年連続出場を果たした。
なぜ山崎康晃はかくも愛されるのか? 問われた当人はこう冗談めかす。
「いやあ、何ですかね。いつもニコニコしてるからじゃないですか」
そう言いながら、顔をくしゃっとする笑みを浮かべる。母性本能をくすぐる笑顔はたしかに25歳の魅力の一つだ。
とはいえ、笑っていればファンが増えるものでもない。人気の要因は、コミュニケーション能力の高さにあると見るべきだろう。サインの求めに快く応じ、誰とでも、何度も顔を合わせたことのある友人のように言葉を交わす。憧れのプロ野球選手が両手を広げて迎えてくれるのだから、ファンはおのずとそこに駆け寄っていく。
実はなかなか難しい「いつもニコニコ」。
だが、いとも簡単に言ってのけた「いつもニコニコ」が、実はなかなか難しい。グラウンドでの「結果」が前提として要求されるからだ。まして山崎が担う抑えの仕事は、しくじればチームが勝ちを逃すに等しい。絶えず笑顔を振りまいていられるポジションではないはずだ。
そんな話の中で飛び出した山崎の言葉には驚かされた。
「もちろん、結果が出ていない時は悩ましい部分もあります。やっぱり人間なんで、手や足が重たくなることもある。だけど、結果にはスランプがあってもファンサービスにスランプはないと思う。
(サインを求められ)『すみません、忙しいんで』と断るのは簡単ですよ。でもそれをやってしまったら、がんばってチケットを取ってくれた人たちに対して、プロとしてどうなのかなって。そんな選手になりたくないなっていう思いがぼくにはありますね」