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山崎康晃はなぜ魅力的な守護神か。
度胸と「ありがとう」が言える愛嬌。
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph byTetsuo Kashiwada
posted2018/07/02 08:00
マウンドに立つと不敵な表情で相手を抑え込む山崎康晃。試合前に見せた表情はとてもあどけないものだった。
オープンに、誰にでもフランクに。
「何かこう、思いが……ぼく、熱くなるんですよ。いま思えば恥ずかしいですけど、あの時はそれまでもやもやしていたものがいっきに吹き飛んだ。特別な『ありがとう』だったので、花屋さんにポンと入って」
自身の気質についてもさらりと言う。
「もともと明るい性格だと思いますね。母の影響もあって、オープンに、誰にでもフランクに接するスタイルをずっと貫いてきました。素直な気持ちを素直に伝えるというのはほんとに素敵なことだと思うし、楽しい時にはみんなハッピーでいてほしい」
期待感もプレッシャーも全部跳ね返す。
その純粋なハピネス精神はファンの心と共鳴し合う。ドイツのテクノバンドZombie Nationの『Kernkraft 400』に乗せて「ヤ・ス・ア・キ!」の大声援が響き渡る康晃ジャンプは象徴だ。
しかし、登場時の熱気が増せば増すほど、選手のパフォーマンスには大きな重圧が伴う。かつて稲葉ジャンプに迎えられた稲葉篤紀(現・侍ジャパン監督)も「凡退した時のタメ息がしんどいと感じたこともあった」と語っていたが、期待を裏切った後の静けさは残酷だ。
山崎はうなずきつつも、最後は自信に満ちた表情を正面に向ける。
「あれだけカッコよく登場してきて、パンパンパンって点数取られてマウンドを降りることだってあるわけですからね。そう考えればプレッシャーは感じます。でも、それを跳ね返してやるぐらいじゃないと、いまのポジションでは絶対にやっていけないと思う。期待感もプレッシャーも全部跳ね返すぐらいの力を身につけてマウンドに立てればいいなって思ってます」