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なぜ松坂大輔はPLに打たれたのか。
松坂、平石が語る20年目の真実。
 

text by

小西斗真

小西斗真Toma Konishi

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photograph byKyodo News

posted2018/06/21 11:30

なぜ松坂大輔はPLに打たれたのか。松坂、平石が語る20年目の真実。<Number Web> photograph by Kyodo News

初めて横浜にリードされた延長11回裏、同点のホームに生還してガッツポーズする平石(左)。PLは延長17回までに7点を奪った。

松坂の球種がわかっていた、という通説。

 横浜のエースが言わずと知れた松坂。その怪物をして「PLしか意識していなかった」と言わしめる最強のライバル。平石は入学後、ずっと左肩痛に悩まされたため、背番号は13だったが主将として、三塁ベースコーチとして重要な戦力となっていた。

 両雄が激突する準々決勝第1試合は、午前8時30分に始まった。試合が動いたのは2回。大西宏明の中前打をきっかけに、松坂に4安打を浴びせ、一気に3点を奪った。

 このPLの集中打に関しては「通説」がある。「PLは捕手の小山良男の構えから球種がわかっていた。それを三塁コーチの平石が打者に声で伝えていた」というものだ。この話は大会直後のNHKがドキュメンタリーで放送したことで一気に認知された。

「僕は球種をわかってはいましたよ」

 平石はストレートのときは「いけいけ」、変化球のときは「ねらえねらえ」と叫んだとされている。ところが、打たれた側の松坂はこう言っている。

「本当の狙いは(球種伝達とは)別のところにあった。後からですが、僕は平石にそう聞いています」。松坂には明かしたという声の真意を、平石に確かめた。

「僕は球種をわかってはいましたよ。でも打者に伝えてはいないんです。甲子園のあの大観衆の中で、声で伝えるということはすごく難しいんです。大輔はすごい投手。じゃあ、自分に何ができるのかを考えました。

 出た答えは捕手を揺さぶろうと。何かがおかしいと考えさせて、あわてさせようと思ったんです。それが本当のねらいです。僕としてはNHKの取材にもそう答えたつもりだったんですが、うまく伝わらなかったのかな。でも大輔から打てたことがまるで僕の手柄みたいになっているので、そこは本当に申し訳なく思っているんです」

 平石には球種がわかっていた。それに合わせて声は出したが、聞かせたかったのは味方の打者ではなかった。怪物攻略のために、捕手の小山をターゲットにしたというのだ。ちなみに平石の声はマウンドの松坂も「聞こえていました」というから、打者の耳にも届いてはいたはずだ。

 だからといって、耳に神経を集め、聞き取ってから対応できるほど松坂の球は緩くはない。やはり平石の証言には信憑性がありそうだ。

【次ページ】 横浜ベンチが慌て、構えも変更。

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