“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
昌子源がW杯初戦で貫いた信念。
誰よりも「何が何でも守りきる」。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2018/06/21 17:30
ファルカオ相手にも吉田麻也との連係で抑えきった昌子源。W杯の大舞台でその能力を見せつけた。
大迫の得点後、昌子はセンターサークルに。
その中で昌子はパラグアイ戦同様にDFリーダーとしての才を存分に発揮した。常にカウンターを警戒し、縦パスが入ると鋭いダッシュで身体を寄せて断ち切る。彼のバランス感覚と高いボール奪取能力に日本は何度も救われた。
そして、一番のハイライトは73分、本田圭佑の左CKから大迫勇也の決勝ゴールが決まった直後だ。日本ベンチに向かって一直線に走り出す大迫を他の選手達も追いかけるように走り、ベンチまで歓喜の輪が広がった時のことだ。
そこに、昌子の姿はなかった。
昌子は歓喜の輪には加わらず、センターサークルの中に立っていた。同点に追いつきたいコロンビアの急いでキックオフをしたい気持ちを抑え込むかのように、仁王立ちしていた。
その気迫はテレビの画面越しでも十分に伝わったはずだ。
パラグアイ戦、そして2-1の歴史的勝利を飾ったコロンビア戦で彼が示したものは、これまで貫き通して来たCBとしての強烈な信念だった。
「点が入った」という事実だけで十分。
昨年、昌子の取材に行き、彼と「センターバック論」について激しく意見を戦わせた時のことだった。
「CBがやるべき一番大事なことは“失点をしないこと”なんです。そのために僕らが存在する。だからこそ、常に失点の危険性がある場所に気を配り続けないといけないんです」
こう力強く言い切る彼に「攻撃時も常にリスクマネジメントはしないといけないし、それがDFの役目。どう対応しているのか?」と率直な質問をぶつけてみた。すると彼は迷わずこう口を開いた。
「極論を言うと、僕らはFWがどんな形でシュートを決めたかとか、誰が決めたかとかは関係ないんです。『点が入った』。その事実だけで十分。
例えば右サイドを突破したとします。それまでの流れは見ていますが、その右サイドの選手がクロスを上げた瞬間に僕はすぐ“クリアされた時、どこにボールが渡ったら危険か”、“相手の選手はどこにいるか”、“守備陣形は整っているか”といったことを考えているんです。
もしそこで味方のシュートをじっくりと見てしまうとする。そこで相手に弾かれたり、GKがキャッチしてカウンターを食らってしまえば、対処できなくなってしまう。それが一番の問題になります。自分はリスクマネジメントをして、結果として点が入っていたらそれでOKなんです」