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見過ごせない“土の上の鉄人”。
鳥谷敬の記録に見る本当の凄さ。 

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鈴木忠平(Number編集部)

鈴木忠平(Number編集部)Tadahira Suzuki

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photograph byKyodo News

posted2018/06/08 08:00

見過ごせない“土の上の鉄人”。鳥谷敬の記録に見る本当の凄さ。<Number Web> photograph by Kyodo News

鳥谷は2004年から通算1745試合で遊撃を守って125失策。遊撃部門のゴールデングラブ賞を4度獲得した。

逃げ場のない戦場に立ち続ける芯。

 他球団のある内野手は、甲子園でのタイガース戦が近づくと、いつも憂鬱だったという。

「エラーするイメージしか湧いてこない。特に足や肩に不安がある時は地獄だった……」

 もちろん、阪神園芸という職人集団がその記録をサポートした部分はあるだろうが、ごまかしのきかないグラウンドで、鳥谷は最も稼働率の高い「遊撃」に立ち続けた。連続試合出場は「1939」という数字だが、より光を放っているのは遊撃を守った「1745」という数字なのもかもしれないとさえ思う。

 そして、東京都東村山市生まれ、早大を出た鳥谷が自由枠でタイガースを選んだ理由の1つに、内野が土のグラウンドであることがあったという。

 なぜ、そこまで……。鉄人と言われる人には、周りがそう思うような、鋼鉄など足元にも及ばないほど硬質で頑なな芯があり、それが果てしない道のりを支えてきたのかもしれない。

 衣笠さんのそれが、体がねじ切れんばかりのフルスイングだったように、鳥谷の場合、土の上という逃げ場のない戦場に立ち続けることだったのかもしれない。

積み重ねられた鉄の意志こそ価値が。

 確か、鳥谷の記録が止まった日は、日大アメフト問題の処分が出るなどして、その喧騒にややかき消された感はある。

 また、なぜ記録は途切れたのか。止まったのか、止められたのか。あの日をめぐっては、そういう議論の方が目立ったかもしれない。

 ただ、その一瞬より、遥かに長い歳月、積み重ねられた鉄の意志にこそ価値があるのではないだろうか。現在よりも過去にこそ価値があるのではないだろうか。

 アスリートの本懐とはひたすら前に進むこと。過去より未来だとはわかってはいるけれど……、こんな時くらい立ち止まって、昔の話をしようよ、と思うのは私だけだろうか。

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