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J1広島独走はレスターの乱と同じ?
城福新監督が授けた最高の「普通」。
text by
北條聡Satoshi Hojo
photograph bySANFRECCE
posted2018/05/19 11:45
昨シーズンの勝ち点をすでに越えた広島。青山敏弘も日本代表入りするなど、注目度は上がる一方だ。
先制されても4戦3勝とたくましい。
それこそ、広島の面々も「やるな三原則」を忠実に守っているからだろう。最後まで隙をつくらず、穴を開けないわけだ。そうでなければ、あれほどクリーンシート(無失点)も積み上がってはいかない。
14試合のうち、無失点試合が実に10試合もあるのだ。総失点はJ1最少のわずか6。うち半分の3失点はFC東京戦でのものである。2番目に失点が少ない川崎Fの総失点が12だから、いかに広島の「失点回避能力」がずば抜けているかが分かるだろう。
もちろん、いくら無失点でも勝ち切ることができるのは、しっかり点が取れているからでもある。その意味で総得点のおよそ半分に当たる10ゴールを叩き出している大砲パトリックの存在は絶大だが、彼独りの力だけでは、ここまでの快進撃はなかった。
いわゆる「堅守速攻」のスタイルだけに、先手必勝、後手必敗というイメージがついて回るが、先制された4試合中3試合が鮮やかな逆転勝ち。先手を取られたくらいで浮き足立つこともないわけだ。そのあたりからも、メンタル面の充実ぶりがうかがえる。
思い出すのは「レスターの乱」だ。
今週末の15節を最後に、ワールドカップの開催に伴う中断期間に突入。ブレーク明けは、厳しい暑さも敵となる。当たり前のことを当たり前にやるためのハードワークが難しくなるわけだが、いまの広島には無縁という気もしてくる。
仮に広島の面々が走れなくなっても、相手はそれ以上に走れない。それだけのことだろう。攻守に先手を取って、局面を有利に進めていく戦いぶりは変わらないはずだ。
何やら今季の広島を見ていると、強豪ひしめくイングランド・プレミアリーグで観る者をあっと言わせた「レスターの乱」を思い出す。あのチームもオーソドックスな4-4-2をベースに戦い、難しいことは何一つしていなかった。
ただ、決して手を抜かず、やるべきことを愚直にやり抜き、頂点まで駆け上がった。そして、広島も――。
走れ、正直者。