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牧田和久は世界中で「打ちにくい」。
アンダースローと緩急で海を渡る。
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byKyodo News
posted2018/01/25 08:00
パドレスには大リーグでプレーした野茂英雄氏、斎藤隆氏がアドバイザーとして従事。心強い味方だ。
「打ちにくい」「嫌だ」と言われるために。
もう1つの変化が牧田のピッチングスタイルだ。同じストレートでも投球間隔に変化をつけたり、クイック投法で投げて打者のタイミングを外す投球術は、社会人時代の練習中にひらめいたという。
「練習でバッティングピッチャーをしたときに毎回、テンポを微妙にずらして投げたら打者が打ちづらそうにしていたんです。バッターから“打ちにくい”“同じ真っ直ぐでもテンポを変えて投げられるとすごく嫌だ”と言われたので、試合でも試してみよう、と」
決して才能だけでここまで来たのではない。緩いボールを有効に使い、クイックを駆使し、打者のタイミングを外すことに生きる道を見出してきた。牧田の「強み」は、こうして局面を迎えるたびに、創意工夫で自分を成長させてきたところにある。
アンダースロー不利のメジャーマウンドにも適応。
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メジャーの公式球を使用して、すでに練習をスタートしている牧田。「ボールが滑るので、握力なども鍛える必要がある」と今後、自分にとって必要となる練習も把握済みである。
アンダースロー投手に不利と言われる傾斜の強いメジャーのマウンドも、すでにWBCなど数々の国際大会で経験済みだ。何より、これまで実績を残すことで自分の評価を変えてきた牧田だけに、メジャーの舞台でも結果を受け止め、そこから学び、工夫し、課題を克服していくことだろう。
「先発、中継ぎ、クローザー、どの場面で投げるときも自分のピッチングスタイルを変えることはありませんでした。自分を貫いたということが、自分がいちばん誇れることです」
その信念は海を渡っても変わることはない。