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女性騎手最多の11勝に到達!
藤田菜七子の「あっという間」。
posted2017/10/17 08:00
text by
川村由莉子(Number編集部)Yuriko Kawamura
photograph by
Yuki Suenaga
「この1年半は本当にあっという間で、正直わけが分からないまま過ぎた感じでした」
Number937号掲載の柴田阿弥(テレビ東京「ウイニング競馬」MC)によるインタビューで、デビューから1年半の気持ちをこう話した藤田菜七子騎手。競馬学校を卒業後、2016年3月3日、根本康広厩舎所属の騎手として18歳でデビュー。JRA16年ぶりの女性騎手として数多くのメディアが取り上げ、競馬ファンだけではなくあらゆる人々が注目した「菜七子フィーバー」は記憶に新しいだろう。
デビュー1年目は年間6勝。2年目の今年、彼女がまず目標にしたのが年間2桁勝利。女性騎手の過去最高成績は牧原由貴子(現・増沢)元騎手が'97年に記録した11勝だった。
そんな藤田騎手の現状を追うべく、小誌記者は9月の中山開催での奮闘ぶりに密着した。開催初日、9月9日の時点で9勝。年間2桁勝利まであと1勝とあって、周囲の期待も大きい中での始まりだった。
直線でかかる「ななこー!!」の大声援。
9日(土)、船橋法典の駅に着くとまだ10時前だというのに競馬新聞を小脇に抱えた人々で賑わっている。歴代の有馬記念馬と皐月賞馬の写真が並ぶ長い地下道を通って競馬場へ。
「まもなく中山第1レース~」
場内にアナウンスが響き渡ると、先ほどまでじっくりと競馬新聞に向き合っていた頭がむくりといっせいに上がり、みんなの視線がコースに集中する。レースがスタートし、直線コースに入ると、
「ななこ―!!!」
ドスの利いた男性の掛け声から、「ななこちゃーん!」と3歳くらいの子供の声まで、場内が声援で一杯に。老若男女に愛される、その人気の高さを実感した。初日は惜しくも勝利には恵まれなかったが、何よりも驚いたのは、藤田騎手の表情だ。
世間一般の愛らしいイメージとは裏腹に、1人の勝負師としての、アスリートとしての風格をたたえ締まった表情、鋭い目つきに驚かざるを得なかった。「まだ20歳なのにすごいわね」と後ろからファンの声が聞こえてきた。そうだ、彼女は今年の8月に20歳を迎えたばかりなのである。