野ボール横丁BACK NUMBER
清宮幸太郎が初めて言ったプロ志望。
「早実-早大」から外れていく覚悟。
posted2017/09/22 18:15
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Shiroh Miyake
12時36分。
この日の主役が、早稲田実業の小室哲哉記念ホールの壇上に上がった。途端、途切れることなくフラッシュがたかれる。
集まった報道陣の数は130人。
白いワイシャツの袖をたくし上げた姿で登場した清宮幸太郎は、右手でマイクを握りしめ、口を開いた。
「わたくし、清宮幸太郎は……」
そう言ってから、たっぷり間を取る。その間、3秒。
次に発する言葉は、「プ」か「ワ」か――。
「……プロ野球志望届を提出することに決めました」
ここまで聞き終え、ようやくプロ志望であることを確信できた。
大学進学が既定路線、とあきらめムードだったが。
清宮は、大学進学が既定路線――。
スカウトの間では、そんなあきらめにも似たムードが漂っていた。
「早稲田大学でラグビーをやるつもりで早実(の初等部)に入った」という清宮にとって、そもそも早大進学は大前提だった。父の克幸も早大ラグビー部でプレーし、監督まで務めた。その後を追うのが、もっとも自然だった。
それだけではない。今の早実は、ほぼ100%早大に進学できる。清宮ほどの選手であっても、「早実-早大」という黄金ルートから外れるには、それなりに思い切りが必要だったはずだ。
高校からプロへ行くような選手は、普通、進路を聞かれたら、つい「プロに行きたいです」と口走ってしまうものだ。しかし清宮は在学中、ただの一度も「プロ志望」を口にしたことがなかった。