沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
馬よりも騎手が主役になる2日間。
札幌に定着したWASJの“面白さ”。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byTakuya Sugiyama
posted2017/08/28 11:25
武豊という騎手が競馬界において発揮している存在感は今も大きい。騎手のオールスターと銘打つからには、彼が必要だ。
状況が分かっていれば、レースの見方も変わったかも。
それをわかったうえで最終の第4戦を見れば、さまざまな興味を持ってレースを楽しめたはずだ。勝てば優勝となれば、2、3着をとりに行く無難な乗り方ではなく、一発を狙う逃げか後方待機をするのでは……などと考えがふくらみ、それが馬券検討の材料にもなったのではないか。
しかし、実際はターフビジョンに上位のポイントが映し出されただけで、特別なアナウンスはなかった。
最終戦は、第11レースのキーンランドカップを挟んで行われる。ファンの記憶と熱気を呼び起こしつつ、見どころを確認するという意味で、なんらかのアナウンスがあったほうがよかったように感じた。実況アナウンサーに、馬場入りのとき「現時点で1位から11位までのどの騎手が勝っても今年の優勝騎手となります」と言わせる手もあったのではないか。
最終レース後の表彰式で順位を発表する形をとっているので、途中ではわからないようにすべきと考えたのかもしれないが、それではもったいない。
戸崎と福永は順位争いで互いを意識。
結局、第4戦を制したカナダのユーリコ・ダシルヴァが第3回WASJの優勝ジョッキーとなった。2位は同点でJRAの戸崎圭太と福永祐一。福永は「最後のレースは、直線で(自分が)沈んだ時点で圭太を探しました」と笑い、戸崎は「最終戦は祐一さんを目標に乗っていたのですが、意識しすぎました。昨日までトップだったので、連覇を逃したのは悔しいです」と話した。福永と戸崎がこんなふうに意識しながら乗るのも、ポイントで争うレースならではの面白さだ。
チーム戦は今年もJRAチームが勝ったが、最終戦の前に、例えば「海外・地方チームが勝つには、上位○着までを独占しなければなりません」などと観客にアナウンスすれば、こちらも見どころになったのではないか。
せっかくチーム戦をするのだから、どちらかに肩入れしながら楽しめる工夫があってもよかったと思う。