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韓国女子ゴルファーには勝てない!?
キム・ハヌル、イ・ボミらの壮絶秘話。
text by
キム・ミョンウKim Myung Wook
photograph byGetty Images
posted2017/07/16 09:00
メジャー大会であるワールドレディスサロンパスカップで優勝した時のキム・ハヌル。今季すでに3勝しており、その快進撃はまだ続いている。
「その1回のミスで一生後悔するという事実を」
その時、父は娘にこう言った。
「母が命と引き換えに残してくれたお金だ。このお金で一生懸命ゴルフをさせるから、一緒にがんばろう」
その時から、申ジエはゴルフに対する考え方が完全に変わったという。
「これまでは『ミスしても経験だ。次にがんばれば良い』という考えでしたが、その1回のミスで一生後悔するという事実を知り、後回しにせず、目の前のことをしっかりすると決めたのです」
その決意がよく表れているのが……数々の過酷な練習エピソードだ。
「20階建てのアパートの階段を毎日7往復しました。中高時代、5年間続けました。手を抜いて階段を歩いているんじゃないかと、わざわざ父がエレベーターでチェックしに来ていましたね。ゴルフの1日の練習は13時間。すべては父に喜んでもらうため、家族のためでした」
韓国ツアーでは3年連続賞金女王となり、2009年には米ツアーの賞金女王に。'10年には世界ランキング1位にまで上り詰めた。
日本ではプレー中、いつもニコニコしている印象だが、その裏には深い悲しみを乗り越えた強さが備わっている。
貧しさの中でも、ゴルフ教育だけは支え続けた。
今季の日本女子ツアーで賞金ランキング1位を走るキム・ハヌル。
韓国では“スマイル・クイーン”の愛称で抜群の人気を誇り、2011年と2012年の賞金女王でもある。
ゴルフの実力だけでなく、美女ゴルファーとしても注目を集める彼女からは一見「裕福な家庭」を想像しがちだが、実は全くの正反対なのだ。
当時、父親は造形・美術関係の仕事をしていたが、そのほかにもさまざまな職を転々としていた。キム・ハヌルは「とにかく裕福ではなかったし、父はいつもお金がなくて困っていました」とハッキリと記憶している。
やはり朴セリに感化される形で、12歳からゴルフを始める。ただ、当時の韓国は用具、練習場代、ラウンド代と何から何まで高額で、ゴルフの練習を続けられる家庭環境ではなかった。
それでもキム・ハヌルは「ゴルフを続けさせてほしい。成功する自信がある」と父を説得し、「娘のためなら」と父は必死に働いたという。