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伊調、吉田、新入部員も対等扱い。
レスリング栄和人の“嫌われる勇気”。
posted2017/04/20 17:45
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph by
Takuya Suguyama
ICレコーダーの録音ボタンを押し、目の前に座るスキンヘッドの指揮官が話し始めるまでは、勝手ながらこう想像していた。
「嫌われる勇気」というより、「好かれる空気」を生み出せる人。
昨夏、リオ五輪のレスリング会場で、何度も教え子との絆を目撃したからだ。金メダル獲得が決まった直後、登坂絵莉はその胸に飛びつき、土性沙羅は肩の上に乗せた。川井梨紗子にいたっては、笑顔でマット上に投げ飛ばしてしまった。
リオ五輪の取材エリアでは教え子の努力を称えたが。
「本当によくやってくれた。彼女の練習量の賜物ですよ」
試合後の取材エリアでは、コーチが止めにくるまでずーっと、教え子が4年間積み上げてきた努力を語り続けていた。
「金以上の銀だよと言いたい。ここまでやってくれた彼女に、本当にお疲れ様と言いたい」
吉田沙保里が決勝でまさかの敗北を喫した後には、主将として日本女子チーム全体を支えてくれたことに対して、ずーっと労いの言葉を贈り続けていた。
Number925号の特集タイトルは「スポーツ 嫌われる勇気」。栄和人監督へのインタビューは、このテーマには合わないかもしれないと思っていた。でも、それでいいとも思っていた。「嫌われる勇気」特集の中に、「好かれる指揮官」の言葉があるのも、面白いのではないかと。
ところが、取材の趣旨を聞いた栄監督は、いきなりこう話し始めた。