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キャプテンでボランチでラームで。
ドイツでの酒井高徳は、全然違う。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byAFLO
posted2017/03/16 10:30
ブンデス最年少キャプテン、しかも外国人選手。ドイツでの酒井高徳の存在感、説得力は日本で感じる以上のものがあるのだ。
本職のボランチとはまた違う酒井の武器。
キャプテンが振り返る。
「前半で2失点くらいやられそうなシーンをキーパーがよく守ってくれたから、運もあったと思う。だけど今までブンデスを戦ってきて、そういうチャンスをものにできなかったチームは最後に負けているなって気がして。自分たちも今季の前半戦はそうだったから。
だから今日は、自分たちの試合になるという感覚が持てた。僕がハーフタイムに訴えたことを、みんなで忠実に再現して最後まであきらめずに、後半は相手にほとんどチャンスを作らせなかったと思う。前半から後半にかけて、集中力が増したというのが、勝因だったかなって思います」
“前から行く”というハンブルガーSVのスタイルを遂行するために、酒井はとりわけバランスに気を配った。そして、激しい球際の争いを苦手とするボルシアMG対策として、今年になって初めて酒井がボランチで先発起用されている(普段は右サイドバック)。
「今日は前と後ろとのバランスというところを強く意識しました。ただ、一か八かみたいな感じで、セカンドボールを拾いに行くところがあったので、そこは本職と比べたら違うところ。試合を読んでポジショニングがとれたら、もっと安定感も出てくると思います。球際を嫌がるチームだったので、人に近くというのを意識した。それで良かったところもある反面、悪いところもあったかな」
リスクマネージメントの仕事に、日本人はぴったり。
酒井高徳のボランチ起用と聞いてイメージするのは、身体をぶつけ合う激しい守備だった。いわゆるクラッシャータイプで、同時に豊富な運動量を発揮するダイナモと呼ばれる選手を想像できる。当然、酒井はこの両方の能力が高い。しかし、長く守備の人間として培った危機察知力も光っていた。
「そうですね。『ここへ走られたら危ないぞ』という感じで、カバーに入ることは多い。普通のボランチなら気づかないことに気づける部分もあると思うんです。そういうリスクマネージメントみたいな仕事をドイツでするうえで、日本人はぴったりだと思います」