“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
高校選抜に大敗、久保建英騒動……。
J精鋭・中村駿太と大迫敬介の見解。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/03/01 07:00
馬力ある突破を何度か見せた中村駿太。日本人には珍しいタイプだけに、今後の成長が期待される。
様々な状況で求められる力強さを身につけるために。
それだけに彼にとって、ネクストジェネレーションマッチは成長した部分を見せる絶好の機会だった。しかも、日本高校選抜のGKはU-20日本代表でのライバルであり、「絶対に負けたくない相手」と語る廣末。気合いも相当入っていたが、日本高校選抜FW町野修斗(履正社高校2年)に痛恨の先制ゴールを許した。
町野が放ったミドルシュートは強烈な一撃だったが、大迫本人は「一瞬(味方DFが)ブラインドになって、下がりながらだったので、反応しきれなかった」と悔やんでいる。確かに厳しいコースではなかったが、反応が遅れた分だけボールに触れられなかった。前半のみの出場で、失点はこの1点だけだったが、反省は尽きなかった。
「僕は一歩目で踏ん張って、そこから突発的な力を出す力が足りない。それが出来ていれば、防げていた」
自身の力不足を悔やんだが、それが彼に身につけば、より彼のスケールは増していくだろう。
GKは軽やかなプレーばかり注目されるが、様々なところで力強さが求められる。
密集地帯でフィジカルコンタクトしながらも、クロスを手元に収める力。
一回の踏み込みで力を溜めて上半身をコントロールし、シュートに食らいつく力。
そしてシュートセーブからのセカンドボールへの飛び込む際の力。
そのセカンドボールに対しても、ただ手先、足先でボールを取りに行くのではなく、身体全体で“面”を作り直して相手を制圧する力だ。
対等に戦って、ピッチに立つ権利を掴むために。
しかし前述したように、日本人で力強さを持っているGKは少ない。アジアで言えば、韓国人GKがこうした要素を持っているゆえに、Jリーグでもここ近年多くの韓国人GKがゴールマウスに君臨している。大迫はその才能を持つ数少ない存在なのだ。
「世界に行けば、日本ほど良いグラウンドコンディションではありません。目の前でバウンドが変わったり、足の踏ん張りが利かなかったりして、掴めないボールが多くなる。だから、セカンドボールの処理がより重要になって来る。(2月に行われた)スペイン遠征でも、相手がセカンドボールを常に狙っていて、そこに詰められて危ないシーンがあったので、狙われてもすぐに反応出来るようにしたい。無理な体勢でも、もう一回面を作ってブロッキングに行ける動き、踏み込み、重心移動の質を上げていきたい」
悔しさが充満しただろう敗戦の後に聞いた、中村と大迫の決意。もう“下からの突き上げ”ではなく、対等に戦って、ピッチに立つ権利を掴んでいくしかない。高3になる彼らの頭の中に、甘えという言葉は一切ない。