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箱根が途切れ、1年生主将が矢面に。
中央大学の報告会は酷な時間だった。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byNanae Suzuki
posted2016/10/19 08:00
箱根駅伝では、スポーツ推薦や学費優待などで選手の獲得競争が過熱している。伝統との共存やいかに。
2013年箱根駅伝の途中棄権が全ての始まりだった。
予選会の前から、「今年の中大は厳しい」という声があったのは確かだ。しかし、低迷の原因を今年にだけ求めては本質を見誤る。
ここ数年、中大の夏合宿や箱根前にグラウンドに出向き、監督や選手たちの話に耳を傾けてきた。
振り返ってみると、負の連鎖が始まったのは、2013年の箱根駅伝の5区で途中棄権した時に遡る。シード権が取れなかったのは1984年以来、29年ぶりのことだった。
この結果を受け、様々な余波が出てきた。
当時の浦田春生監督に進退問題が浮上し、最終的には続投となったが、その時点で高校2年生に対するリクルーティング(勧誘活動)の立ち上がりが遅れた。
その結果、翌年の2014年に入学してきた現在の3年生部員の数が少なくなってしまった。いま、3年生は4人しか残っていない。
それでも選手たちは必死にあがき、力を蓄えていた。正直彼らの姿を見ていると、なんとかシード権という定位置に戻ってきて欲しいという思いに駆られた。
4年生が意地を見せ、1年生も素質を見せたが……。
実際、流れを変えるチャンスもあった。2015年の箱根駅伝では、10区途中までシード圏内を走っていたが、選手のアクシデントによって19位に終わった。この時、シード権を再獲得していれば流れも変わったはずだが、中大にとってはさらなる試練となってしまった。
そして2016年、中大、ホンダで結果を残してきた藤原監督が就任し、改革が始まった。
予選会の記録を見ると、チームの上位10人に4年生が6人入っており、中でもハチマキ姿がいつも鮮烈な町沢大雅は全体15位、相馬一生は33位と健闘を見せている。やはり、20kmとなると上級生の力が際立つのだ。
1年生も二井康介がチーム5位、主将の舟津がチーム6位の成績。間違いなく、来季はより記録を伸ばしてくるだろう。
しかし2、3年生が上位10名にひとりずつとあっては、やはり厳しかった。