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本命カブスと忍者バエス。
「マトリックスのよう」な新スター。

posted2016/10/15 08:00

 
本命カブスと忍者バエス。「マトリックスのよう」な新スター。<Number Web> photograph by Getty Images

今年からレギュラーに定着したバエスは、ホームランもあれば盗塁もある万能の内野手だ。

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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 カブスが勝った。ようやくNLDSを突破した。実をいうと、私はひやひやしていた。今季の大本命にはちがいないが、なにしろ、肝心なところで負けるチームである。2003年のNLCSを覚えている人なら、私と同じ冷や汗をかいたのではないか。あのときは、モイゼス・アルーが捕ろうとした左翼線のファウルフライを……。ああ、いまさらのように蒸し返すのはやめておこう。

 2016年のNLDSは、相手がジャイアンツだった。そう、偶数年に強く、崖っぷちにも強いジャイアンツ。今年も彼らは、2連敗のあとの3戦目に、延長13回でサヨナラ勝ちを演じてみせた。カブス・ファンは一様に不吉な予感を抱いたのではないか。

 しかし、敵将ブルース・ボウチーが墓穴を掘ってくれた。8回まで2安打の好投を見せていた先発マット・ムーアを、9回のマウンドに送らなかったのだ。5-2とリードし、投球数が120球に達していたのだから妥当な判断ともいえるが、ジャイアンツのブルペンはけっして盤石とはいえない。

 案の定、デレク・ローが打たれ、ハビエル・ロペスが四球を出し、セルジオ・ロモが右翼線に二塁打を打たれた。3人出して、アウトをひとつも取れない。結局、4人目のウィル・スミスが代打の代打ウィルソン・コントレラスに同点打を浴び、5人目のハンター・ストリックランドが、「ラッキーボーイ」ハビエル・バエスに逆転のセンター前ヒットを許したのだった。

カブス躍進の原動力は投手陣と守備陣。

 絵に描いたようなヒーロー物語だ。主人公はもちろんバエスである。

 ポストシーズンがはじまる前から、バエスは一部で注目を集めていた。もちろん、カブス快進撃の原動力は、30球団中最少失点を誇る強力な投手陣と、30球団中第3位の得点をあげた勝負強い打線だ。が、カブスは守備も効率がよかった。7割3分1厘のDERは30球団中トップだ。要するに、インプレーの打球を打たれる回数が少なく、それをアウトにする率が非常に高い。背景にあるのは、状況判断力、スウィング観察力、打球が飛ぶ場所の予測といった要素だ。これ以外では、送球の正確さやタッチの巧さも求められる。

【次ページ】 相手の盗塁を防ぐタッチプレーが抜群に巧い。

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ハビエル・バエス
シカゴ・カブス

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