プレミアリーグの時間BACK NUMBER
チェルシーの青をイタリアの青に。
コンテ新監督は労働と堅守を求める。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2016/07/21 11:20
堅守速攻でタイトルを獲得したモウリーニョとも決別したチェルシーの業は深い。コンテ流はこの地でも成功するか。
3年間で、オーナー好みの攻撃的スタイルに変貌?
コンテは、最終的な今季新戦力のプレミア適応具合と、既存主力との融合具合を観察しながら、2年目以降を意識した基本戦術の色を見定めていくに違いない。ユベントスでアンドレア・ピルロを生かしたように、次第にセスクを中盤深部の策士とする3-1-4-2へと向かう可能性もある。
意識が前にいきがちなセスクに攻守のバランス感覚改善が見られれば、ユベントスでも基本化を考えていたという4-2-4で、攻撃色が強烈に押し出されることになるかもしれない。
中盤中央はセスクとカンテ。後者には、高性能自動掃除機の如く中盤の隅々まで敵の攻撃の芽を摘みにいく能力がある。前線のアウトサイド要員にはアザール、新たに4年契約を結んだウィリアンの他にも、昨季新戦力で中堅どころのペドロと若手のケネディ、ユベントスへのレンタルから戻るフアン・クアドラドらがいる。
新チェルシー作りに取り組むコンテは、監督の仕事を「手元の素材を生かして最高のスーツを仕上げる仕立屋」にたとえた。就任1年目は、チームカラーでもあり、ハードワーカーの基色とイタリア風の色合いをも意味する「青一色」になりそうだ。
もっとも、3年間の契約期間で最終的に完成させるスーツは、全権を握るロマン・アブラモビッチの好みに合ったスタイルとカラーでなければならない。「攻撃的なブルーズ」を望むオーナーは、色合いは地味だが上質のスーツを作るモウリーニョという仕立屋を、1度ならず2度までもお払い箱にした雇い主だ。
コンテ体制のスタートに際して辛抱すべきは、誰よりもオーナーをはじめとする経営陣。今季は、勝利を目指して全身全霊を傾けて「働く男」の新作第1弾となる青いスーツに胸を張って袖を通し、トップ4返り咲きを目指すコンテのチェルシーを見守るべきだ。そうすれば、かれこれ10年以上も求め続けてきた「攻撃色」が目を引くブルーズを作り上げる監督が誕生するかもしれないのだから。